▽解決手段。 
 


「あああっ、あのっ!」
「あ、申し遅れたけど私陸奥雛子と言います。伊達工寮だよよろしくね」
「なっなんで……!?」

慌てふためく日向と、飄々と自己紹介なんぞしている陸奥は実に対照的だった。
ふらふらと少々危なげな飛行をする箒に一抹の不安を覚えながらも、菅原と澤村は内心安心していた。

「まあ……あいつなら大丈夫だろ」
「ですね。日向が心配と言えば心配ですが……」
「ああいうタイプにはあの教え方がまずは効果的だろうな」
「クソッ……日向の癖になんて羨ましいことを……!」
「―――……」

それぞれ、上空でふよふよと揺れる箒に視線をやりながらではあるが、なんとも気の緩い発言をしている。

「余計な事は考えないで。深呼吸するの。それから、少し上体を箒に近付けて。シーカーは速く飛ぶことが要求されるから、加速したければ姿勢はなるべく小さくするの」
「は、はいっ!」
「私が今から後ろで好き勝手箒操るから。日向は他のことは一切考えずに、最適な姿勢の取り方を探してみな」
「えっ……!」
「ちなみに喋ると舌かむよっ」
「うひゃっ!?」

宣言通り、ひゅんひゅんと好き勝手あちらに此方に飛び回った。
最初こそ悲鳴を上げたりして怖がっていた日向だったが、「絶対落ちないから、信じていいよ」と囁いたのを期に、そろそろと上空を自分なりに分析して、10分ほどで降りてきた。

それから仕上げに、と一人で飛行させられた日向だったが、陸奥との二人乗りの前と後では安定感がまったく別物になっていた。

「どうよ龍。あんたのお姉様に免じての陸奥式飛行訓練は」
「うおおお流石ッス雛子サン! 一生ついて行きます!」
「まあ私烏野寮じゃないけどね。スニッチはうちのエースシーカーが頂くけどね」
「あれならなんとか練習になりそうだよ。わざわざありがとな、陸奥」

わっはっはと豪快に笑う陸奥を囲む面々から一歩引いて、例の天才児がジッと陸奥を見つめている。
勿論気付かない陸奥ではなくて、くるりと振り向いてやった。

「……なにか用かな、天才くん」
「……っ、止めて下さい。影山です。影山飛雄」
「……トビオ?」
「? ハイ」
「えっ、じゃああんたが及川がボロッカスにしてやりたいクソ可愛い後輩!?」
「…………」

及川の口から度々話を聞くことがあった。中等部に居た頃からだ。中等部の時は同じ寮だったらしいから、てっきり青城に組分けされていると思ったのに。
いやはや、組み分け帽子の考え(?)はわからんなあなんて思っていたら。

つかつかと歩み寄ってきた影山が、真っ直ぐ陸奥を見て言った。

「箒の操り方、俺にも教えて下さい」


 
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