▽どうも皆さんお久しぶりです! 



10月1日、夕刻の学校特急ホーム。
遠くに特急の灯りが見える頃、きちんと制服とローブに身を包んだ陸奥と菅原が姿を見せた。

「誘導役を押し付けられるとは運が無かったなあ」
「こちとらまだ生活習慣なおってないってのに……ふぁ、っふ」

そうは言いながらも、両名、共に所属寮の副寮長の任を担っている身だ。車内にいたところで、どうせ言いつけられていたろうな、とは、思うのだけど。

そんな他愛もない愚痴を言い合った後、ぶわりとローブを翻す風が吹いた。
学校特急が、ホームに到着したのだ。

「や、久しぶりだねえ茂庭」
「誕生日以来だからな。どうだった、天体観測」
「生活歪みまくってやばい……」
「だろーと思った」

寮に向かう列の先頭を歩きながら、また陸奥はあくびと溜息をして、茂庭がそれをけらけらと笑った。
動き回る階段を渡り、絵画を抜けて、南塔の最上階。そこが、伊達工寮である。

「はいはいキリキリ動け〜トランク置いたら順次食堂に移動、始業式で先生の話聞き流したらすぐに飯だよ早くしな!!」

通行の妨げにならない談話室の暖炉の前で、手を叩きながら声を張って寮生を急かす。
ウィース、なんて緩い返事とは裏腹に、たいていの後輩達はテキパキと動いてくれていて、すっかり慣れている同級生達から順に、扉の向こうに消えて行く中。

「雛子先輩お久しぶりですー」
「ん? ああ、舞ちゃん! 久しぶり〜元気してた?」
「夏休みは満喫してきました!」

ぱたぱたと駆け寄って来た後輩女子、滑津舞の笑顔にわしゃわしゃと頭を撫でながら応える。

「いいねえ羨ましい。荷物はもう運んだ?」
「はい、バッチリです。でも食堂、先輩の隣にお邪魔したいので一緒していいですか?」
「お、いいよいいよ一緒食べよ。なんだよ全く可愛いな」
「前期は先輩方は兎も角、二口のアンチクショウにずっとしてやられていたので」

直前まではうふふなんて笑っていた滑津が、サラリと口が悪くなったことにうっかり流石はこの寮の後輩だなあなんて思う。例年、他寮に比べて圧倒的に女子の少ない伊達工寮の特色とも言えるのが、所属する女子が大抵図太く逞しく成長するのである(勿論陸奥のように生来の気質もあるけれど)

二口のアンチクショウが聞いてたら噛み付いたろうなあ、と本人の耳に届かなかったのに安心しつつ滑津の方に右腕を回しながら。
どうせならもう片方、左隣も、いつものじゃない誰かを並べたいなあなんてぐるりと見回す、と。

「あ。こーがねーがわ〜」
「? なんですか陸奥先輩」
「おいでおいで」

手招きをすると、190を越える長身でありながらもちょこちょこと寄って来る様は、中々後輩然として可愛い。
わざわざ屈んで目線を近づけようとする黄金川の脇の下から左腕を回して、がっしりと無理やり肩を組んだ。

「うわっ!?」
「あたしの隣で晩飯どう?」
「えっ、はっ、はい!」
「よーし完璧。んじゃ行きましょうかあ。場所は鎌ちやら笹やんが取ってるから大丈夫っしょ」

黄金川はかなり陸奥の方に傾いていたが、3人で肩を組んだまま寮の出入り口に向かうと、陸奥と同じくそこから寮生を急かしていた寮長殿に大層訝しげな顔を向けられた。

「なにしてんだお前……」
「食堂の私の隣って予約制らしいからさ。ごめんね茂庭今日は予約がいっぱいなの」
「馬鹿言ってないでお前も早く行けよ……あと黄金川可哀想だぞ」

超傾いてる、との指摘に(本人は「大丈夫す!」とは言ったけど)、仕方がないので腕を組む方向に変えて。呆れた溜息に送られながら、足元に移動してきた階段を駆け下りた。


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