▽私の味方は居ないのか 
 


休みの間、食事をするテーブルは特に決まってない。
ただ、学校の生徒は大抵が安定のポジションを持っているので、休みの今もまばらにそれぞれいつもの席に座っている。

その合間を埋めるようにして、梟谷グループの学生達が好き勝手座るのだ。

「陸奥さん、ここ良いですか」
「はいはいお好きにどー……ぞ?」
「失礼します」

朝食後から、座りっぱなしで闇の魔術に対する防衛術の宿題の教科書後半の黙読をしていた。
あと少しかな、と読みふけっていたところに掛かった声に生返事をしながら、ふと聞き慣れた声じゃないことに気付いて顔を上げた。

「……赤葦くんじゃん」
「はあ。わかってないのに返事したんですか」
「うん、ごめん。なに、お昼?」
「休憩中に適宜昼食を取れ、と言われたので」

見回してみると、成る程何人か戻っていて、まばらにテーブルが埋まりつつあった。

同じように他のテーブルを見回してほんのちょっと顔をしかめた赤葦の意図に気付き、目の前にあった空の大皿をティースプーンで叩く。
すると忽ち大皿は唐揚げやらハンバーグ、おにぎりやらで埋まり、グラスと飲み物が現れ、積まれた取り皿と箸立てがきちんと大皿のわきに鎮座した。

「はい、ドーゾ」
「……すいません。いただきます」

積まれた取り皿や箸を、わざわざ私の分も取ってくれながら。便利なものだななんて呟いた。

「? 赤葦くん、マグルなの?」
「そうでしょうね。父がマグル出身の魔法使いでしたが、魔法学校卒業後は実家に戻ってマグルの母と結婚して生まれたのが俺なんで」
「ふーん。じゃあ魔法界の事は知らなかった?」
「ええ、まったく。母も知らなかったから、俺に手紙が届いた時は家族会議でしたよ」

なんてことない軽口のように言うということは、うまいこと丸く収まったのだろう。
マグルのリアリストに魔法界の理解を求めるのはいささか難しいものだ。

「そう言えば」
「うん?」
「大丈夫だったんですか、昨日」
「ああ……ごめんね邪魔しちゃって。木兎のお陰でね、大丈夫だったけど」
「けど……?」
「みんなにバカバカ言われたし叩かれるしヘッドロックかけられるし散々だった」
「……愛されてるんだと思えば」
「みんなしてそんなこと言う。赤葦くんも案外生意気」
「…………」

フンと鼻を鳴らして、赤葦が取ってくれた取り皿におにぎりと唐揚げを盛った。


 
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