▽みんな愛情が過激すぎる
あの後、ブラッジャーを片付けた先生達までが競技場からすっ飛んできて、やっぱりまた各寮の寮監の先生達にまで怒られた。ただ人助けしただけなのに。
いつもは私を擁護してくれる茂庭と青根、小原でさえ、
「今回は陸奥が悪い」
と言うし頷くしで、散々である。
「もー……みんなが私の事大好きなのはわかったけど〜、私だって人助けしてたんだからそんな怒らなくていいじゃん!」
「そういう態度だから余計怒られんだよ馬鹿」
「いたっ!」
完全にふてくされてソファにふんぞり返る陸奥の後ろから、笹谷が容赦ないチョップを落とした。
隣に座っている茂庭は、やはり「反省しろよ」といつになくドライだし、正面のソファに座る鎌先と二口もうんうんと頷いている。完全に彼女の味方は居なかった(まあ全員が全員、彼女の身を案じてのことであるが)。
彼女の特異体質を初めて目の当たりにした作並にさえ、もっと気をつけて下さいと言われてしまったくらいである。
「ブラッジャーで怪我はしなかったけどみんなが私に怪我増やしてる! ヘッドロックかけたり殴ったりチョップしたり叩いたり!」
「愛でしょ」
「なにそれ雑すぎんだけど。二口生意気」
「やっぱ雛子さん残んない方が良かったんじゃないスか」
「ああ、それは原因にも言われた」
寮に戻る前、冷ややかな視線と共に、「お前がそこまで馬鹿だとは思ってなかった」と言われた。
私だってこんな事になるとは思わなかったものだ。
「まあ、こんだけ愛されてんだからそろそろちょっと自重すれば?」
ソファの後ろから顔を出して、ニヤニヤしながら言う笹谷を見上げて。
「死にたくないし、善処するわよ」
フンと鼻を鳴らして肩をすくめた。
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