▽わざとじゃないし! 
 


一体、ブラッジャーの私に対する察知力はなんなんだろう。
どこまで競技場に近付いて良いやらわからず、大体もう競技場は見えているのだしそろそろ引き返そうか、と思った時。

「んん? なんだありゃ」

それは私が競技場まで来るハメになった原因が呑気な声をあげた瞬間だった。
風を切って飛び出してきたのは当然と言うべきかなんというか、

「ブラッジャーだよ!! 競技場に戻って、早く!!」
「ハァ!?」

素っ頓狂な声を上げた彼を突き飛ばして逃げながら、確か今梟谷が練習していたのだったな、と思い出す。
なるべくならやたらにブラッジャーを砕くような真似はしたくない。

杖を喉元に当て、ソノーラス、と唱えてからすうっと息を吸い込んで。
(この間およそ0.5秒)

「木兎ぉーっ!!!!!」

エコーのかかった私の声が響いた直後、ブラッジャーとは別に風を切る音がした。

「ふんっ!」

とんでもない速度で突っ込んできた木兎(流石全国5指のシーカー)が、方向転換する勢いでブラッジャー(2個)を競技場に弾き飛ばした。
競技場に戻され私の察知と追跡を止めたらしいブラッジャーは、また好き勝手ヒュンヒュン飛び回っていた。

「あーしぬかとおもった……あっ」

拡声魔法をかけたまま呟いてしまって、その呟きまでもが響いた。やだね恥ずかしい。
拡声魔法を終わらせて木兎を見やると、珍しく焦ったような顔で此方を見ていた。

「いやー、木兎、今回ばっかりは助かったわ。ありがと」
「おまっ……馬鹿か!?」
「馬鹿じゃないし!」

木兎に言われるなんて心外だと睨み上げると、競技場の方から飛んでくる箒が一騎二騎三騎……アレッちょっと数え切れない。

「陸奥お前馬鹿か!」
「かっ、鎌ちにも言われたくないんだけど!」
「いやいやいやいや……陸奥ちゃんなにしてんの??」
「えっちょっ、及川笑顔こわ」
「怪我は!? ないのか!?」
「だっ、大丈夫大丈夫、東峰ビビりすぎ」
「お前もっと危機感持てよオイ」
「あだだだだだだクロ、ちょ、いてえよ!!」
「黒尾、もうちょいやっとけ」
「岩泉なに言ってんの!? ちょ、まじでいたい! 茂庭助けて!」
「いやお前はもうちょっと懲りた方が良い」
「ハァ!? いただだだだだだ!!!」

ギリギリと黒尾にヘッドロックをかけられながら色んなところからバカバカと貶される。後輩の声も聞こえた。
誰も彼もが容赦ない。酷い。

「私だって好きで追い回されてないし!」

黒尾の手からなんとか逃れて叫んだ私に、その場にいた(多分)全員が、

「だから言ってんだよ馬鹿!」

と、サラウンドで返した。


 
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