▽試合は白熱したらしい 
 


ずんだにつけたスコープを見るより、城中の興奮で試合の勝敗は知れる。
スニッチを取ったのは木兎、160対40で梟谷の勝利だったそうだ。

さすが、日本の学生クイディッチチームのシーカー達の中で五指に入るだけはある。
すっかり打ち解けた様子で試合の事や、それじゃなくとも散らばって話しているのを大広間の隅で見ていると、赤いクイディッチローブが視界の端から駆けてきて。

「雛子さぁん!!」
「おー、リエーフ。お疲れさん。どうだったよ試合は」
「木兎さんすごかったッスけど! そうじゃなくて!」
「そうじゃないのか。なんだね」

大きな身体で長い手足を振り回しながら興奮して喋るリエーフを宥めながら首を傾げると、相変わらずキラキラした目で。

「単純に飛行技術だけなら雛子さんのがすげーって聞いて! マジすか!?」
「えっ……いやー……どうかな……木兎と競ったのは三年くらい前が最後だったよ」
「でも木兎さんもクロさんも研磨さんも言ってた! 雛子さん出来ないこと無いんスか!?」

飛行技術すげーし、変身出来るし(ここはちょっと小声だった)、勉強出来るし、と。
やっぱりキラキラした目でそんな事を言うので(なんだコイツ可愛いな)、ううん、と少し考える振りをして。

「クイディッチは出来ないよ」
「死んじゃいますもんね」
「うるさいよ」

やたらに素直なところは可愛いようで可愛くない。もう少しオブラートを覚えろよと思う。
そんなに興奮する話かな、と他人ごとのようにぐるりと大広間を見渡すと。

同じ様に広間の隅、壁の近く。リエーフと同じ赤いクイディッチローブのままのプリン頭と、グレーのクイディッチローブの妙にクールな横顔。向かい合ってる研磨と同じくらい。

なんとなく二人をじっと見ていると、まず視線に敏感な研磨がこちらを向いて、それに気付いた向かいの彼もこっちを向いた。かと、思えば。

「雛子」
「お、おお?」

手招きをしながら控え目に。
研磨が、私を呼んだ。


 
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