▽ついに来たか。
クイディッチ開幕戦から幾日と経たないある日。
その日城内は、全体的に浮き足立っていた。
それもそのはず、今日、この日この瞬間こそ、梟谷クイディッチチームグループとの交流会が始まろうとしていたのだから。
「……来たな」
「……来たねえ」
「……変なこと、しないでよね」
「「しないしない」」
「……」
木兎と黒尾、私が揃った時の悪ガキ具合を(多分一番身を持って)よく知っている研磨である。
数え切れない程の梟が運んできたログハウスのようなものが中庭の一角に着地するのを見ながら、研磨のジト目を受ける。
まったく、こういうことに関しては本当に信用がないものだ。
今日一日は特別時間割、なんと丸一日使った歓迎会だ。
「よう雛子! 黒尾! こないだぶむぐっ」
「ひ、さ、し、ぶ、り、ねぇ? 木兎」
「早速かよお前……」
「??? あっこれうめえな!」
「「ハァ……」」
出て来るや否や駆け寄ってきた木兎の口が、余計なことを言わないうちに朝食のデザートがてら握っていたワッフルを突っ込んで黙らせた。
この学校内部に侵入する手立ては少ない。姿現しは出来ないし、そうなれば正面から堂々入るか、もしくは殆どの人が知らない外と繋がる隠し通路を通る。
そうでなければ、木兎がやったように、学校の近くまでは姿現しで来て、あとは動物もどきの姿で悠々と入ってくればいい。
が、そもそもこいつは未登録であり、どの方法を使ったところで不法侵入だ。他人に知れたら不味いというのに、その自覚が本人に無いから困ったものである。
「……なに、またなにかやったの?」
「「なにも」」
「ん? なんの話だ?」
「……俺、絶対関わんないからね」
早速ジト目の研磨に疑いを掛けられたし、向こうからふいっと顔を背けられたかと思えば背を向けられて、研磨は寮のテーブルに戻っていくし。本当に信用がない。
「木兎の所為だからね」
「? なにが?」
「なんでもない」
何はともあれ、交流会が始まった。
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