▽馬鹿な子ほど可愛いってやつ。 
 


いつも勝手に度肝を抜いてくれる友人の馬鹿さ加減に呆れ、一体どうなったのだろうかと思っているうちに、気付けば一週間。
試験の結果が、出た。

「鎌ちはマグル学ギリギリ合格、魔法史もギリギリ合格だから……」
「俺にバタービールと陸奥からの悪戯リップだな」
「二口は……うわっ、魔法史89点! 今までこんな点数見たことないんですけど!」
「雛子さんちゃんとちゅーして下さいね〜」
「……なにあんた本気だったんだ」
「え、及川サンも本気だと思いますけど」

笹谷と二人で、教えた相手の答案を眺めていると割り込んだ声に振り向く。
きゃらきゃらと笑う二口は、ケロッとした顔で何言ってんすかなんて言った。私の台詞だよ。

「まーいいか。ちょっとおいで二口」
「ウィース」

ソファの背もたれの向こうから上半身をせり出した彼の、緩んだネクタイを引っ張って。

左の頬にほんの少し唇を触れさせた。

「え゙っ……!」
「なに。ご褒美でしょ? ほっぺたなら減るもんじゃないし、次のテストもこのくらい頑張ってよね〜」

まさかマジでやるとは思わなかった……とボヤく二口と、顔を背けて小さく肩を震わす笹谷と。

笹谷が余計な事を言わないうちに、二口には他の寮を回って今まで一緒に勉強をした面子にいつもの教室に集まるように伝えてとお使いを頼んだ後。
入れ違いに入ってきた茂庭が、不思議そうな顔で。

「二口のやつ……今回はイケたとか言ってたけど、駄目だったのか?」
「いいや、89点だったよ」
「えっマジで!? ……じゃあなんであいつ、ほっぺた……」
「陸奥、あれは悪戯リップ?」
「いいや、ただの口紅。可愛い色だったから買ってたの。いい色でしょ?」
「ま、悪戯リップより可愛いげのある色だったよ」

ケラケラと笑う私達に、状況を理解した茂庭が「からかうのも程々にしてやれよ」と溜息を吐いた。


 
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