▽これだよ私が求めていたのは! 
 


組み分け帽子が「伊達工ッ!」と高らかに宣言した。その声に我が寮のテーブルから歓迎の拍手と、私の口からは「ヨッシャァァァアアア!!」とあるまじき声が出た。

「こっち、私の隣においで!」
「はいっ、ありがとうございます、お邪魔しますっ」
「かっわいいなああああもううう宜しくね作並くん!」
「はい! わからないことだらけですが宜しくお願いします、先輩方!」

ぺこりと頭を下げた作並の頭をわしゃわしゃと撫で回した。これ、そう、これだ!
止めてくださいぃ、とぽこぽこした声が聞こえてくるけど、やっぱり先輩だからか私が女だからか抑える手は遠慮がちだ。
腹の肉を摘もうとする二口とは比べ物にならん、可愛い。

「はーっ、ごめんね作並くん、今のは歓迎の挨拶だから!」
「そうだったんですか?」
「雛子さん騙しちゃ駄目っしょ! 俺ン時はそんなの無かったし!」
「え?」
「あの茶髪は気にしなくていいから。あっ、私副寮長の陸奥雛子。まあ好きに呼んでね」
「はいっ、陸奥さん!」
「困ったことがあったらいつでもなんでも言ってね作並ちゃん!」

組み分け帽子に呼ばれた時から今までずっと、私の中の作並の株は鰻登りだ。可愛い。

それからずんずんと新入生達の組み分けは滞りなく済んで。
歓迎の宴と相成った。

ひたすら作並に構い倒しながら鎌先とおかずの取り合いをしたりしながら満喫していると、背後からローブのフードを引かれた。
私の背後のテーブルは青城寮のテーブルだ。どうせ向こうのちゃらんぽらんな寮長だろうと思って振り向いた、ら。

「もー、なにさ及…………」
「……及川さんじゃなくて悪かったですね」
「……は? えっ、国、見?」
「うん。せっかく同じ学校なのに別の寮で残念です、陸奥さん」
「……マジで?」
「マジです。組み分け聞いてなかったんですか? 青城寮に入りました」

寮は違いますけど、宜しくお願いしますと淡々と告げた国見に目眩がした。
そんな、嘘だと言ってくれよ。


 
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