▽予想外とは正にこの事。 
 


6月末。
泣こうが喚こうが、とうとう定期試験の幕が開けてしまった。

定期試験の一週間は、一つの科目が一度だけなので、三年にもなると選択科目のおかげでかなり歪な時間割になる。
その例に漏れず、一限テストで二限が空き、そしてまた三限がテストと言う時間割になってしまった私は、同じくこの時間が空きの潔子と、一限や三限のテストについて話しながら、中庭に面した渡り廊下を歩いていた。

「……雛子」
「ん? なーにー潔子」
「雛子の梟って、大きい?」
「? ううん、小さいコノハズクだよ。郵便梟としては割と近距離向きの」
「……うん、そうだったよね」
「どしたの?」

珍しくハッキリしない態度の潔子に首を傾げてみせると、私の背後を指差して、あれ、と呟く。

「私の梟じゃないし、でも、こっちに向かってくるから……」
「……?」

潔子のセリフに若干神経を尖らせて振り向くと、バッサバッサと大きな羽ばたきで此方に向かってくる大きな灰色の塊。
私のずんだとは大きさからして比べ物にならないし、潔子の梟は白い。更には嘴にはなにもくわえていなければ、足に括り付けられた荷物もない。

なのに、こちらに向かってくる。

「んんん……?? …………っ!!」

私の頭上にたどり着くなり、バッサバッサと歓喜に震えるように旋回する、灰色の大きなワシミミズク。

灰色の中、ところどころ黒の混じる羽。
大きいけれど伏せがちの瞳。

(こっ、このワシミミズクは……まさか……いやっ、ていうか間違い無い! 私が見間違うはず無い!)

思うやいなや、手招きで傍らに呼び寄せたワシミミズクをガッシと小脇に抱えて。

「ごめん潔子! この子知り合いの子だわ! と言うわけで急用が出来ちゃったから、またね!」
「えっ、う、うん、あとでね」

キョトンと驚いたようすの潔子にへらっと笑って、回れ右をして全速力。
この時間、確か黒尾も暇を持て余していたはず。

音駒寮を目指して走る途中、食堂の方から賑やかな声。
山本とリエーフが騒いでいる声だ。
と、言うことはもしかしたら。

「ねえ!! クロ居る!?」
「あー? なんだよ陸奥。でけー声…………お前、それ」
「ちょっと! ちょっと来てすぐ!」
「ん、おお」

珍しく、ぽかんとした黒尾を急かして、森の方へ走った。


 
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