▽伊達工式試験勉強 
 


「ではお馬鹿な後輩共、宜しいか」

羊皮紙の丸めたのを、ぱしんと机に叩きつけて。

陸奥は正面横一列に並んだ二口、影山、日向、灰羽、矢巾をじろりと一瞥した。

「魔法史の授業を始めます。が、その前に君達ご希望のご褒美を聞いてやろう。ちなみに私が君達に求めるお礼はこれです」

スカートのポケットから、態とらしすぎるくらいのピンク色のリップを取り出す。
二口だけがやっぱり、という顔をして、後の四人は首を傾げた。

「これをつけた唇で、君達の顔にキスマークをつけます。二口は去年体験したからどういうものかわかってるね? 今年は鼻の頭に付けるから」
「うへえ、マジすか」
「なんスかそれ」
「気を付けろよ。あのキスマーク最低三日は取れないから。ちなみに俺去年一週間ここにドギツイピンクのキスマークあったからな」

ここに、と言いながら自分の左頬を指差す。

その言葉にそれぞれの反応を示した生徒達に陸奥はでは改めてご褒美のおねだりを聞いてやろう、とリップを仕舞った。

「はいっ! 俺は例の約束がいいッス! カキューテキ速やかに!」
「いいよ、いくらでも」
「よっしゃ!」
「ハイハーイ、じゃあ俺リップ無しでちゅーしてくださーい」
「ほっぺたね、いいよそんくらい」
「じゃあ俺もそれーっ」
「はいはいわかっ……なんで及川がいんのよ。あんた妖精の魔法教える側じゃなかった?」

いつの間にか二口の隣に座って勢いよく挙手した及川に危うく頷きそうになったが、踏みとどまってじろりと睨む。
が、そんなもので怯む及川ではないので、だってさー、とぼやく。

「俺今回魔法史ちょっとやばめだから陸奥ちゃんに確認してもらいたいんだもん」

きゃらきゃらと笑った及川に溜め息。
どうせ戻れと行っても聞かないだろう。わかったわかったと軽くあしらって。
矢巾と影山と日向は、と訊ねると。

「矢巾もちゅーでいいよ。ねえ矢巾」
「ちょっ、及川さん!?」
「え、なにお前、陸奥ちゃんのちゅーイヤなの?」
「えっ、や、イヤってわけじゃ無いスけど」
「じゃあいいよね、陸奥ちゃん宜しく!」
「……うん、影山と日向は?」

矢巾にはあとで改めて聞いてやろう、とひっそり思いながら。
賑やかしい面子に圧されて口を開けていなかった二人に今度こそ訊いてやると。

「飛行術、教えて下さい」
「えっ、あっ影山ずるい! あのっ、陸奥さん俺も……!」
「あー、はいはいわかったわかった。一回だけだからね」

ご褒美とお礼の摺り合わせは終わった。

そしてようやくここからが、胃の痛くなるような勉強会の幕開けなのだった。


 
[ 35/61 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -