▽お手並み拝見 
 


箒を手にして競技場に現れた私を見るやいなや、茂庭と青根がギョッとした顔で慌てて駆けてきて。

「そんな慌ててどうしたの二人とも」
「どうしたの、じゃないよ! なんで陸奥が競技場なんかに!」

危ないじゃないか、と悲鳴じみた声を上げる茂庭の言葉に、青根もブンブンと勢い良く頷く。

「まあまあ落ち着きなさいよ君達」

確かに、あの特異体質発覚事件から私はクイディッチを避け競技場を避けに避けまくっていた。そう考えるとこの態度もわからないでもないかも知れない。なにより、案じてくれているのだろう、素直に嬉しい。
どうにも今年に入ってから競技場に足を踏み入れる回数がやたら多くていけない。それもこれも寮を問わない後輩達がやたらと私を箒に乗せようとするからだ。私は悪くない。

そう思いながら二人を軽く片手で諌めると、二口もからからと笑いながら。

「茂庭さんも青根もビビりすぎ! 雛子さんだってブラッジャー飛んでなきゃ平気ッスよ!」
「あんたはもうちょっと私の心配しなさいよね」

二口の脇腹を裏拳で軽く殴ってから、ブラッジャーを出さない以上、とりあえずビーターの二口と青根、あとスニッチも使わない事にしたので鎌先も地上に残し。
当初の目的だった作並とゴールポストまで浮上し、次いでチェイサーの三人がクアッフルを持って同じく浮上した。

成る程、一年生ながらに候補に選ばれるだけあって作並の飛行は安定している。

それから適当にチェイサーの三人を飛ばせながら、ゴールにクアッフルを投げて貰う。
が、やはり候補に選ばれるだけあって、ほいほいと実に楽しそうにゴールを守る。

それならば、と。
地上に残した三人に合図を送り、浮上してもらった。

「あんだよ」
「今からあんた達ちょっとチェイサーになりきって!」
「ハイ?」
「私がキーパーやるから!」
「ああー……そういう」

納得のいったらしい三年と二年に頷いて、キョトンとした作並の方を振り向く。

「さて、作並ちゃん」
「はい」
「今からちょこっとだけ、擬似ゲームやってみよっか」
「擬似ゲーム……ですか?」
「そ」

敵チームのボールと味方のボールとを見分けられるように、と付け足すと合点がいったようで。
やっぱりあのキラキラした顔で、作並は宜しくお願いしますと頭を下げた。


 
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