▽からかうのも程々に 
 


「ギリギリセェェェッフ!!!」
「残念、バッチリアウトだよ陸奥雛子。伊達工5点減点ね。早く座りなさい」
「ぐっ……スイマセンっした……」

猫又にも合同の青城にも伊達工の何人かにもクスクスと笑われながらも、堂々通路を歩いてビニールハウスの中ほど、律儀にも私の席を一つ空けて座ってくれていた茂庭と笹谷の間に座った。

「馬鹿だなあお前。何してたんだよ」
「ちょっと中庭で後輩と語らってたんだよ……」
「中庭で? てことは、うちの後輩じゃあ無いな」
「なんでわかんの?」
「さっきの時間、伊達工の一年は魔法薬だし、二年は妖精の魔法だったから」
「へえ……茂庭よく把握してるねえ」

もそもそ話をしていれば視線を感じたのでキュッと口を引き結んだ。これ以上減点されたくはない。

相変わらずいろんなとこで懐かれてんなあ、と他人事のように鎌先が正面でボヤいた。

「鎌ちだってよく懐かれてんじゃん。二口とか」
「あぁ? どこがだよ」

先生の話をしっかりと聞き終わった頃、手を動かしながらさっきの彼の言葉を拾った。
実習中の無駄話は、しっかり(間違わずに)手が動いていれば文句は言われない。
我らが伊達工寮の面子にとってはお茶の子さいさいである。

「あ〜、懐いてるよな〜。あのタイプは誰にでも当たり障り無く接する半面、懐いたらトコトンだろ」
「茂庭と私と、笹谷と鎌ちへの懐き方は別みたいだけどね〜」
「茂庭と陸奥はほんと先輩先輩って感じだけどな」
「笹谷と鎌ちには近所の兄ちゃんみたいな懐き方だよね」
「単に生意気なんだよアイツは」

ケッ、なんて吐き捨てた鎌先だけど、私達は知っている。
生意気なんて言うけれど、なんだかんだ気に掛けてしまうのも、ちゃんと認めていることも、不器用ながらに後輩を可愛がって居ることも、知っている。

「……お前ら、なにニヤニヤしてんだよ」
「いや〜? 鎌ちも可愛いとこあるよねえ、笹谷」
「だよなあ、陸奥」
「ムカつくんだけど! お前ら二人ともすげームカつくんだけど!」
「ちょっと! お前らやめろ! 鎌ちもいちいち挑発されんなって!」
「もう、鎌ち、茂庭に迷惑かけないでよね!」
「陸奥もだよ!」
「え〜?」

……いくら、私達が実践集団でも。
軽口を言い合いながらの実習で手元を狂わせなくても。

「いいかね、何事も限度がある。お前達の実習の成績と茂庭に免じて少しだけにしておいてやる、けども。伊達工5点減点だ」
「騒いですいません……!」
「「「ウィーッス」」」

調子の乗りすぎはよくない。

背後のテーブルでブファッと無遠慮に噴き出した及川の背中を殴りながら、薬草学の時は程々にしようと思った。


 
[ 29/61 ]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -