▽可愛い後輩を求む。 
 


気付けば早くも翌日に迫る入学式について、談話室は盛り上がっていた。

……正確には、盛り上がっているのは私と二口と鎌先だけだが。

「あーも、早く明日にならないかね……」
「雛子サンひどくないッスかー? ここにこんな可愛い後輩いるのに!」
「お前のどこが可愛いんだよ」
「(バ)鎌先さんに言ってないですぅー」
「あァ!?」
「二口より青根の方が倍可愛いし、そうじゃなくて私はこう、思わず撫でくり回したくなるような後輩が欲しい」

ソファで寛ぎながらぎゃあぎゃあと好き勝手喋る私達を小原と、青根は少し居心地悪そうに(多分私の所為)見ていて、笹谷は我関せずを貫いてクイディッチの雑誌を読んでいる。

そんなことを分析しているうちに、寮の方から階段を駆け下りる音がして、バタンと音を立てて茂庭が滑り込んできた。

「お前らうるさい! 静かにしろって! 新学期早々そんな下らない言い合いで減点なんてやめてくれよ!?」
「やあ寮長、ご機嫌麗しゅう」
「麗しくないよ! ていうか陸奥も副寮長なんだからさあ……!」

何を隠そう、時刻は現在午後11時30分を回ったところ。あまり騒がしくしていると廊下の方から先生がにゅっと顔を出して減点されても可笑しくない時間である。ちなみに寮監は追分先生なのだが、あの人自分の寮だろうと容赦なく減点してくる。
そのお陰だろうか、恥ずかしい話伊達工寮の得点は万年ドベだ。

去年一昨年は私や青根が頑張って点数を稼いだのに、それを上回る減点を鎌先と二口が食らっている。絶対に許さない。

「なあ、俺もう寝るからな? お前たちくれぐれも静かにして、ていうか出来ればすぐに部屋に行って寝てくれないか? な?」
「茂庭がそこまで言うなら私は断る義理はないよ……おやすみ茂庭、お互いいい夢見ようね。明日が楽しみだね」
「一年か……手がかかるのが増えなきゃいいんだけどな……」

ポンポンと肩を叩きながら寮に続く階段の方に歩き出そうとしたとき。
今までずっと黙っていた笹谷が、ぱたむと雑誌を閉じて、口を開く。

「この寮、問題児の巣窟みたいな寮だから無理じゃね」
「……笹谷、それ自分で言う?」
「茂庭とか小原とかが珍しいんだって、寮的に」
「おい私も問題児扱いか」
「陸奥が問題児じゃなくてなにが問題児だよ」

カラカラと爽やかに失礼な事を言ってのけて、お先、と寮に上がって行く。

隣で深々と溜め息をついた茂庭が可哀想だったので、とりあえず後ろを振り向いて杖を振った。

「んんっ!?」
「んーっ!?」
「鎌ちも二口もお口チャック、ね。小原と青根も部屋に戻りな〜。おやすみちゃん」

強制的に黙らせたので、とりあえず今晩のうちに減点されることはないだろう。
ああ、本当、切実に可愛い後輩が欲しい。


 
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