▽そういやそんな約束したな
膝の上でゴロゴロと喉を鳴らして睨んでくる大きな黒猫をゆるゆると撫でる。
ぶにゃあと可愛くない声を出してフンと鼻を鳴らすのでだってさあ、とボヤいた。
「私悪くないじゃん。送られてくるのは不可抗力じゃん」
「に゙ぃい……」
「心配されるような事はしてないって。あの荷物は冴子姐さんに頼んで丸ごと燃やした」
「……にう」
「人の上で寛いでおきながら溜め息とか生意気」
ぐしゃぐしゃと頭の癖毛をかき回すと、またやはりぶにゃああああ、と可愛くない声を上げる。
それにも構わず撫で回し続けていると聞こえてきた、雛子さあん、と賑やかな声に顔を上げる。
「あ。リエーフ。何で居んの?」
「臨時休講になったンスよ。あっ、猫! でっけーし目つき悪いっすね〜雛子さんの猫ッスか?」
「あ。あ〜、リエーフ、何で私のところに?」
どっすんと私の隣に腰を下ろしたリエーフに訊ねると、にかっと笑って。
「この時間空きだって聞いて。前に変身見せてくれるって言ったじゃないすか!」
「……あー、よしリエーフ、じゃあこの子抱っこしといて」
「に゙っ!?」
抱き上げた黒猫をそのままリエーフの方へ渡す。
キラキラした目で快諾し、手を差し出したリエーフに抱かれる直前。
「あっ!?」
ジタジタと暴れ出した黒猫はスタッと芝生に下りて、次の瞬間には。
「ヤローに抱かれても嬉しくねえっつの」
「うわぁぁああクロさんんん!?」
「そーだよ」
「えっ、え?」
黒尾はやれやれと頭を振って伸びをしてから、リエーフとは逆隣に座り直した。それに驚いているリエーフに、けたけた笑いながら。
「前に言いそびれたけど、クロもアニメーガスだよ」
「言うつもりも無かったけどな」
フン、と鼻を鳴らした黒尾を指差して、そう教えてやった。
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