▽お呼びじゃない非日常 
 


帰省から戻ってきた寮生達のお陰で賑やかさを取り戻した談話室で、呼び止められて振り向いた。
落としたのはしわくちゃの手紙。
そういやローブの内側に入れっぱなしだったかと思い出して、受け取ってそのまま暖炉に放った。

「エッ、いいんですか?」
「うん、いいのいいの。ほらほら、みんな五月病にかかってんじゃないよー! 今日は朝食前に朝礼だから早く行きな!」

パンパンと手を打ってだらだらする同輩、後輩達を急かす。
慌てて走る一年生達の背中を見送りながら、焼けていく手紙をちらりと横目で確認した。じりじりと焼け焦げていって、手紙だったとわからなくなるまで焦げたのを見て、寮を出た。

「あれ、おい、あのデカい荷物持ってんの陸奥のずんだじゃねえか?」
「えっ、あらっ、なにしてんのあの子!」

嘴に新聞、足に持った重い荷物によろよろと低空飛行をする小さなコノハズク。間違い無い。うちのずんだだ。

荷物と一緒にぼすんと膝の上に落ちてきたよれよれのずんだの嘴から新聞を抜いて、そっとテーブルの上のグラスに差し出すと、慌てたようにいそいそと水を飲んでいた。

「陸奥に荷物って、珍しいな」
「私もそう思う。一体誰が……」

差出人の名前の欄には、花押が一つ押してあるだけ。
だけど、私にはそれで十分だった。

「……茂庭、ずんだの面倒見てて貰って良い? 元気になったら、勝手に戻るだろうから、水飲むのに溺れないよう見ててくれたらいいから」
「え、いい、けど、陸奥は……?」
「このデッカい荷物、部屋に置いてくるからさ!」

小脇に抱えて席を立った。

そうして食堂から出る直前、一番向こうの音駒のテーブル。
クロと研磨が、何とも言えない表情でこっちを見ていた。


 
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