▽おかえり日常 
 


夕食の為に食堂に行って(どうせ隣り合っているが)、国見を青城のテーブルに連れて行った。
及川が手招きをするので、彼の隣に座らせてから。

「お疲れ様〜、陸奥ちゃん」
「ん……うん。じゃあ後はよろしくね及川」
「ハイハーイ。さっ、国見ちゃん、ご飯にしよう」

少し離れた所で不安そうな顔で見ている茂庭の方に一歩、踏み出して。
少しだけ振り向いた。

「……英」
「!」
「今年の夏は、一緒に家に帰ろうね」
「……そうだな」
「えっ……ちょっ、陸奥ちゃんどういう……国見ちゃんどういうこと!?」
「いただきます」
「ちょっと!」

きゃんきゃんと騒ぎ出した及川には答えず走って、茂庭の隣に座った。
そこでようやく、はああと安心したように深く息をついた。

「大丈夫か? なんとかなった?」
「うん。多分、もう大丈夫」
「そっか……」
「? 茂庭、疲れてんね?」
「もー二口がうるさくて……」
「あー……」

懐かれているのは先輩名利に尽きるが、あいつはあれでなかなか子供っぽい。
仕方ないなあとガシガシ頭をかくと、隣にのっしと誰かが座った。

「あれ、どしたの青根。珍しい」

きょとんと見上げると、ふいっと顔をそらされた。
けれど、なんとなく耳が赤い。

なっ、なんだこれ天使か……!?

「ちょっ、おまっ、青根ーっ! 抜け駆けしてんなよふざけんな!」

ぷんすこしながら走ってきた二口が青根を退かそうとするが、フンと鼻を鳴らしただけだった。テコでも動く気がないらしい。

「なにお前何キャラだよ!」
「騒ぐな二口! ほら、こっち側座っていいから……」
「お? じゃあ俺が座ろ」

茂庭が開けた一人分のスペースに、一体どこから現れたやら笹谷が滑り込んだ。
勿論二口の表情は盛大に歪んで。

「ちょっとなんで笹谷さんが座るンスか!」
「え? 茂庭が譲ってくれたから」
「お! れ! に! 譲ってくれたんスよ!」
「先輩様の特権だよ、向かいにでも行け」
「横暴!」

ぐるりと回って移動すれば、真正面には既に鎌先が座っていて。

「後輩イジメだ!」
「なにがだよ!」

伊達工寮の晩餐は、実に賑やかに過ぎていった。


 
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