▽嘘は言ってないよ嘘は。 
 


昔話に花を咲かせるためだけにここに国見を呼んだわけではない。
揉め事を今後起こさないため、事態の把握と収束の為だ。

「……お前さあ、ずるいんじゃないの」
「は? なに、急に」
「自分はなにも言わないくせに、俺にばっかり色々喋らせんの、ずるいんじゃないの」
「いや、私になに喋れっつーのよ……」

時々こうやって脈絡の無いことを言う。
そういや名前の呼び方についてあれこれ言われた時も、魔法学校について感づかれた時もそうだった。

なら、今回は。

「雛子がローブの中に隠してる手紙、とか?」
「……なんで?」
「……俺だって、お前と同じで未熟な魔法使いだ。ずっと、そうだった」

私は初めて彼に会ったとき、バレーボールを破裂させた。
彼はそれを驚いた顔で見てはいたけれど、ちっとも不思議がっていなかった。

それが、異質なものへの驚きではなかったとしたら。
初めて見た、同類への驚きだったとしたら。

「全部じゃないし、誰にでもってわけじゃない。多分、親しい相手がかなり……よっぽど強く意識してること。それが、なんとなく見えてた」
「あ、きら」
「中学で色々本読んで知ったけど、開心術って言うんだっけ。学校入る前の、俺の魔力の暴走がそれだった」

それと同時に閉心術についても知り、心を閉ざす術も学んだ。
……成る程、巧妙に隠されるわけだ。

そんな天才的な暴走の方法なんか聞いたこと無いが、実際あったと言うのだから信じるしかない。

「あとなんだっけ。あの純血主義の喧嘩買った理由?」
「え……う、うん。そう」
「雛子に関わるとろくでもないって言われたから」
「は……はあ?」
「遠回しに色んな先輩敵に回したんだよあいつらは」

どうせ見分けもつかない癖に、と憎々しげにボヤいた。

「だって雛子……実家は確かにマグルだけど、マグルじゃねえじゃん」


 
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