▽全く"頼れる"先輩である。 
 


「武ちゃんせんせー! 今日の夜、大教室を使う許可下さい」
「大教室、ですか? どうしてまた」
「今残ってる生徒の大部分って、多分私や先生と同じマグル出身者じゃないかと思うんです。一年生の彼らはまだ慣れていないでしょうし……頼れる先輩や寮の垣根を越えた友情を育む第一歩として、自由参加制の一年生歓迎会をやるために! 先生どうかサインを!」
「陸奥さん……! 先日の影山くんの事といい、君は本当に後輩思いですね!」

そう言うことなら勿論許可します! それから伊達工寮にプラス10点です!

チョロい。チョロすぎるぞ武田一鉄。
あんなにチョロいと若干心配にすらなるが、まあ此方としては有り難いのでヨシとする。

サインを貰った紙はローブに入れておき、そのままの足で玄関ホールに向かう。
そこには既に音駒の黒尾と夜久、青城の松川と花巻、烏野の菅原、それと笹谷がいた。

「あらら、烏野は一人?」
「まーなー。大地連れてったら色々止められそうだし、旭に言ったら大地にバレんじゃん」
「……スガってほんといい性格してる」

にしし、と笑った烏野の優等生にへらっと笑い返して。
そんじゃ行くかあと金貨の入った袋を振り回して、学校の側、生徒や学校側御用達の烏野商店街に向かった。

烏野商店街はそんなに広くはないが、いつかの烏野寮出身者が中心となって作った商店街で、魔法族、もしくは魔法学校出身のマグルしかいない。
だから、私達学生でも保護者と学校に許可を貰えば在学中に通うことが出来るのだ(まあ今ここにいる面子は全員成人しているので許可はいらないが)。

「嶋田さあーん、なんか面白いのある?」
「おっ、来たな悪ガキ共。今日は何買いに来やがった?」

輪切りにされた豚が笑うなんともシュールなエプロンで、段ボールを抱えて笑う眼鏡のお兄さん(嶋田さん)。
勿論烏野寮出身の先輩である。

「一年生の歓迎会するんだー。思いっきり宣伝しとくから、なんか面白いの売って! あと毎回言うけどそのエプロン欲しい」
「エプロンはお前が卒業後にうちに就職するなら何枚でもやるって言ってるだろ」

けらけら笑いながら、そう言うことなら花火でも出してやるかと一度店の奥に引っ込んだ。
しばらくして、幾つか袋を持って戻ってきた嶋田は、

「ついでだからたっつぁんとこにも行って来いよ。最近変なもん入荷したっつってたからな」

と、笹谷達に袋を押し付けながら悪戯っぽく笑った。


 
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