▽かくれんぼは得意な方
「えーっそれうっかり直撃とかしてたらどうすんスか!?」
「知らねーよ及川に聞いてその辺。ったくもー馬鹿かってーの!」
あの後、国見と箒を相乗りして競技場に行った後、及川をぶん殴って寮の談話室に戻った。
もう本当にこの休みの間は競技場には近寄らない。図書室に籠もってやる。そういや薬草学でレポートの宿題出てたな。なんについてのレポートだっけ。
あー、そういや魔法史もレポート出てたなー、ゴブリンのなんとかかんとか……うわやっべー、覚えてない。
「ちょっと雛子さん聞いてます!?」
「いや全然」
ぷりぷりぽこぽこ(実際そんなに可愛くないけど)する二口をよそに、甘いものが食べたいなあ、なんて思い立って立ち上がる。
「雛子さん?」
「厨房行ってくるー。チョコレートパイ食べたくなっちゃった」
「えぇーっ!?」
屋敷しもべ妖精達から貰ったチョコレートパイをもしゃもしゃと食べながら、陸奥は悩む。
久々にちょっと籠もるか、と厨房に逆戻りして今度はポット一杯の紅茶も用意して貰って、北側にある鐘楼の方へ向かって歩き始めた。
鐘楼の最上階、風景画の金の額縁をそうっと指先でなぞり、ノッカーのような装飾が現れたところをコツコツとノックした。
カパン、と額縁が壁から浮いて、開いた先には穴がある。
ポットを中に浮かべて、チョコレートパイも片腕の中に抱えたまま、穴の中へともそもそ進んでいった。
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