▽危うく死ぬところじゃねえか
マグルの世界なら、みんなこぞって遊園地に行ったりショッピングしたり友達の家に泊まったり。したんだろうけど。
「……考えてみりゃ私マグルの友達居なかったわ」
ほんの一週間程度のGW休暇だったが、城内は驚くほどガランとしていた。
食堂で朝食のシリアルをもそもそと食べる視界に、案の定生徒達は少ない。
とは言え、この学校内での友人はクイディッチチームに所属しているのが大部分なので、その多くが練習の為に城内に残っているが。
果たしてこの一週間の間に何が起こるもんかな、とぼうっと中庭を練り歩いていた。
その時だった。
「うおっ!?」
ごうっ、と風を切る音に身を翻すと、轟音を響かせて今まで私がいた場所が陥没した。
…………ブラッジャー!?
ぼんやり歩いているうちに、どうやら競技場付近まで来てしまっていたらしい。
誰だよブラッジャーを場外ホームランしくさったやつは……!
なんて悠長に考えている暇はない。なんにも嬉しくない特異体質、ブラッジャーは私を見つければ追い回してくる。
ドスンドスンと私の居た場所を悉く跳ね回るブラッジャーに杖を向け、振ろうとした瞬間。
「雛子!」
バコーンッ、と先程までとは違う音がした。
陰が出来て、杖を構えたまま惚けた顔で逆光になったブルーのユニフォームの人物を見上げた。
「……国見? え、あんたクイディッチ……?」
「チェイサーです。及川さんから聞いてましたけど、ほんとに追い回されるんですね。多分向こうで誰かが受け取ってくれたと思うんですけど」
チェイサーと言う割には、今恐らくブラッジャーをぶん殴った棍棒を国見が持っていて、じっとそれに視線をそそぐと、これは矢巾さんから引ったくりましたという返答。お前先輩をなんだと思ってるの。
「ちなみにブラッジャーを場外ホームランしたのは及川さんです」
「ぶん殴るわ国見箒乗せていって」
あいつ絶対許さない。
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