▽大抵の面倒の原因は相性だ 
 


「うん。お断りしよう」
「っ、は?」
「日向には悪いがこの際だからハッキリ言わせて貰うと、彼がびっくりするほど下手くそだったから手助けしてあげただけで、並以上に箒を操れる奴なんかに私は指導仕切れないね」

陸奥のキッパリした言葉の裏で、日向はうぐっ、などと呻いていたが、本当にその通りだし、お陰で多少安定した飛行が出来るようになったので文句など言いようもない。

「……普通、相乗りしてあんなに安定した飛行が出来る人はそういないはずです」
「そんなことないよ。多分菅原だって出来るし、ああいうのは及川だって適任じゃない?」

言いながら、うちの寮や音駒のプレイヤーは我が強すぎて適任者が見当たらなかったのが地味に悲しいが。

それでも食い下がる影山に、仕方がないとあまり言いたくはないんだけどさと切り出す。

「私、クイディッチ自体があまり好きじゃないんだ」
「えっ……」

こればっかりは驚いたらしい。
と言うか、かなりショックそうな顔をされてしまった。
後ろで謎の悲鳴を上げた田中と日向もだろう、多分。菅原と澤村の苦笑も聞こえた。烏養は相変わらず難しそうな顔をしていたが。

「なんでか知りたい?」
「……理由があるなら」
「いいよ。烏養センセ、ブラッジャー出して」
「……行くぞ」

箱の中でガタガタ揺れていたブラッジャーの留め具をバチン、と外すと、瞬く間にそれは宙に浮かび上がる。
それが真っ直ぐ陸奥に落ちてくる前に、彼女は影山の手から箒を引ったくって飛んだ。

すると、いったいどうしたことだろう。

一度地面に着地すると思われたブラッジャーは、ぐいんと進行方向を改め、陸奥の後に続いた。
陸奥がどれだけ可笑しな飛行をしても、必ずまったく同じ経路を辿る。
3分ほど奇妙な追いかけっこをしたあと、陸奥は向かい来るブラッジャーに向かって杖を振り、ブラッジャーはオレンジ色の火花を散らして砕けた。

「……わかった?」
「……あんまり」
「実はね、私も前にシーカーにスカウトされたのよ。でも私、ブラッジャーと相性が最悪みたい。一度だけ練習に参加した時、ブラッジャーが二つとも私に付きまとって危うく死にかけたから、それ以来クイディッチにはなるべく関わらないようにしてるの」
「そん時の練習試合の相手が俺達だったんだよなー」
「試合中断して慌ててブラッジャーと陸奥を引き剥がしたんだもんな。俺達もいつ陸奥に直撃するかヒヤヒヤしたもんだ」
「ちょっと澤村、サラッと嫌なこと言わないでよ……」

もはや特異体質と言うしかないな、というなんとも投げやりな、しかし恨めしそうな追分先生の表情とコメントは忘れられない。
結局、飛行技術を鑑みて、最も適任だろうと鎌先がシーカーとなったわけだが。

そう言うわけだから、悪いけど諦めてねと影山に箒を返して、陸奥は競技場を後にした。


 
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