15.11.11 



別段、なにか考え事をしていたわけでも、物思いにふけっていたわけでもない。
ただ頬杖をついて、視線が真正面だっただけで。

「みーやじ」
「……おう」
「どっち食べる?」
「お前また製菓会社の陰謀にまんまとハマってんのか」
「言い方」

そんな視界の中に、夏純が一番スタンダードな赤い箱と緑の箱を手に、ひょっこり顔を出した。

「で、どっち食べる?」
「塩味食いたい」
「はいよ」

よいしょ、なんて言いながら、俺の机に腰を預けて、緑の箱をバリバリ開ける。
携帯を確認しながら口を開くと、プレッツェルが二、三本差し込まれた。

「一本ずつにしろよ」
「だってこれ一袋の量多いんだもん。次の授業までに食べ切りたい」
「……あ」
「ん」

文句を言いながらも、もりもりと食して、また口を開ければ同じようにまた複数本のプレッツェル。
教室内に目を向ければ、至る所で同じようなものを頬張る奴らが居て、どいつもこいつも踊らされてるなあ、なんて思いながら三度目の口を開いた。

「あ、そうそう宮地」
「ん?」
「今日バイトの後迎え来れる? それとも早く帰る?」

なんの因果か、製菓会社の陰謀渦巻くこの日の生まれのお陰で、自分の誕生日を忘れてた、なんて下手な展開は無い。
なにより律儀な家族は未だに朝顔を合わせると「おめでとう」と言ってくれる。なんなら律儀な部活仲間にも朝練で顔を合わせた時に言われたばかりで。

「……ウチには裕也に伝言頼んで、迎えに行ってから帰る」
「ほう」
「から、それまでに用意しとけよ」
「えっ」
「えっ、じゃねーよ。わざとらしいよお前。なんか企んでるんだろ」

言いながら、じろりと見上げると、しばしきょとんと(わざとらしい)顔をしていたが。
すぐにへらっと笑う。

「バレちゃった? まあ、あんまり期待はしないで」

そういえば、こういうことは見逃さない筈の彼女から、まだなんの反応もなかったなあ、なんて。

ハニーイエローのマフラーと、雑紙の応募抽選で当たったみゆみゆのサイン色紙を受け取る、8時間前の話。


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