今日も今日とて君が好き
午後8時、秀徳高校男子バスケ部の体育館。
一軍に属し、ユニフォームを持つ部員の殆どが居残り自主練習に励んでいた時だった。
ザッザッザッザッ、と走り来る音が聞こえてきたかと思った次の瞬間。
バァン!! と、半開きだった扉が開け放たれ。
「宮地!」
「うおっ!? 天野!? んだよお前まだ残ってたのか? っつーか練習中にうるせ」
「今度のライブのファンクラブ会員限定席のペア抽選当選した!!!」
雪崩れるように飛び込んできた女子に飛び上がったのは全員で、振り向いたのも全員で、しかし応えたのは一人、当然、呼ばれた宮地である。
眉を寄せた彼に怯みもせず、あろう事か彼の言葉を遮って叫んだ。
瞬間。
「あああああマジか夏純よくやった!!!!」
「アザーッス!!!!!!」
まさかの宮地からの熱烈な包容に、ドリンクを吹き出したりボールに躓いてみたりするのは、その光景を見慣れない数人の一年生。
とっくに慣れている二年生や三年生……特に、毎日のようにこんなやり取りを目にする大坪や木村はああまたかと、全く気にする様子はない。
「うし、なら約束だからな。次の休みはお前に付き合うわ」
「やった!! カフェ、カフェ行こ!! 限定コースター揃えたい!!」
「おうわかった任せとけ」
やけに輝いた顔の二人を遠巻きに見ながら、引きつった顔で高尾が。
「あの、木村さん、あの人は……? っつか、宮地さんどうしちゃったンスか……?」
「あいつは宮地の彼女だよ」
「あいつらは大体いつもああだぞ?」
仲良いよなあと朗らかに笑う大坪に、腹筋に精一杯力を入れている高尾はそれどころではなかったが。
天野夏純。
仲の良い女子達や、宮地との関係を知る三年の女子達からは「変な奴」と称される、正真正銘、宮地清志の恋人だった。
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