従姉妹様の彼氏力検定

1st Stage‐第一印象


及川は浮かれていた。
というのも、バレー漬けの毎日の中、今日はたまたま出来た休息の日。
常に彼の都合を尊重してくれる恋人と、久し振りの丸一日のちゃんとしたデートの日だからだ。
少し町の方に出て、なにをしようかなあなんて羨ましい悩みを脳裏で巡らせていた、待ち合わせ10分前のこと。

事件は起こったのである。

「あのう」
「うん?」
「及川徹さん、ですか? 高校バレーの……」
「……うん、そうだよ」

控えめに声をかけてきた、カチューシャをつけた小柄な女の子。
なんとなくどこかで見た顔だと思ったけど、思い出せない上に関心のない女子は生憎メイクのお陰で皆似たような顔に見える。
ほんの少しもじもじとした仕草には及川は慣れっこだった。
だから正直、にっこり笑ってはみたものの、脳内じゃあタイミングが悪いなあなんて思っていた時である。

「……じゃあ、やっぱりあなたが」
「えっ?」

すうっと彼女の目が据わった。

「及川ごめんね、お待たせ……あれ?」
「あっ瑞姫、」
「瑞姫ちゃん!! やああんもう会いたかったーっ! 久し振りーっ! 会いたくて会いたくて震えるどころの話じゃなかったから会いに来ちゃったよ!!」
「……えっ!? 知り合い!?」

そして、及川が待ちわびていた恋人の登場で彼女の態度は急変し、ぎゅうぎゅうと蔵元に飛び付いて表情を緩めていた。
戸惑いながらも嬉しそうに久し振りだね、驚いたよなんてはにかむ蔵元にも置いていかれたような気分で及川がぽかんとしていると。

「あ……。ごめんね、及川。紹介するね。この子は東京にいる私の父方の従姉妹で、烏丸円ちゃん。一つ下よ」
「そっか。瑞姫の従姉妹ちゃんね……。なんか俺のこと知ってたみたいだけど改めて。及川徹です、よろしくね」

カチューシャの彼女……もとい、烏丸への既視感は蔵元の面影かと納得し、人の好い笑顔でにっこりと烏丸に手を差し出すと、彼女もにっこり笑ってその手を取った。蔵元と違って溌剌と愛嬌のある子だな、なんて考えられたのは一瞬だった。

「……っ!?」
「初めまして、及川さん。瑞姫ちゃんの従姉妹の烏丸円です。瑞姫ちゃんを誑かした男の面を拝んでやろうと東京から来ました。どうぞ宜しくお願いします」
「ちょ、ちょっと円ちゃんったら!」

ごめんね及川気にしないで、なんて言う蔵元は気付かない。
握手した及川の手がみしみしめりめりと悲鳴を上げている事なんて。

answer‐"最悪"
(なにあの握力女子!?)





 


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