それはまるで
青天の霹靂

 


ぱらり、ぱらりと。
緩慢な動きでスケッチブックを捲りながら、俺さ、と、先程私が遮ってしまった話の続きを始めたようだった。

「お前に、お礼、言いたかったんだ」
「お礼……? どうして」
「弓長に、八つ当たりっぽくなっちまったけど、色々吐き出したからすんげえ楽になった。チームメイトにもそう言われた。前よりずっとちゃんと、バレーに向き合えた気がするんだ」
「それは……矢巾くんが、頑張っているから」

伝えそびれたけれど、私が練習している彼や、ひとりで片付けをする彼を描いたのは、彼自身に認めて欲しかったからだ。
慢心して欲しいのではない。そうではなく、ただ、彼は努力をしていると、それを、自分自身で認めて欲しかった。

謙遜するふりをして、卑下をするのではなく。単純に事実を受け止めて欲しかったのだ。

そう言いたかったのに、そうじゃねえんだ、とゆるゆる首を横に振った。

「……うれしかった」
「え」
「お前が俺のこと、すげえって言ってくれたのも、努力が無駄じゃないって言ってくれたのも、これ、も」

うれしかったよ、と。

震える声で彼は言った。
背の高い彼が俯いていて、生憎どんな顔をしているかはわからない。

あー、やべえ、だせえ、と矢巾はぶつぶつ言いながらしゃがみ込んでしまって。

「弓長」
「は、はい」
「やっぱ俺、お前の絵、好きだわ」
「あ、あり、がとう」
「なあ弓長、いっこ頼まれてくれよ」
「わっ、私に出来ることなら……!」

それはそれは小さな声で、また絵を描いて、と。矢巾は言った。
そして、それから。

「あと、弓長。俺、お前のこと、好きだわ」


 
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