目を細くして
君が笑うから

 


「……もーすぐ、俺ら、三年だな」

ポツリと、パンにかぶりつきながら彼は呟いた。
春休みは、もうあと一週間もない。

私の課題の進捗状況も悪くなく、(元)担任の先生と生活指導の先生から、きちんと三年生に進級できると言われている。

矢巾は、やはり相も変わらず昼休みには教室に上がってきて、自主練を見学させてくれた後に私を家まで送り届けてくれる。

しかし、春休みも終われば私達がこうしている理由なんて無くなるわけで。他の大勢の人が溢れる中、わざわざ彼が私に構いに来るだなんて到底思えない、のだけど。

「弓長さ」
「は、はい」
「もしも、三年なってクラス一緒だったら……あー、いや、やっぱ違ってもだ」
「え?」
「ちゃんと学校来いよ! 俺話しかけるし!」

喋る相手が居たら周りなんかわざわざ気にかけることねえだろ、俺けっこう喧しいし。

なんてことを言った矢巾に、目が点になる。
たった今考えた事と真逆な宣言をされてしまったので、ついうっかり返事をし損ねたのだけど、彼はなにやら察したらしい。

「弓長、さては三年なったらお前のことシカトするとでも思ったろ」
「えっ……いや、そっ、そんなことは」
「だからお前嘘下手! 初めて会ったときも言ったけど!」
「……おっ、もい、ました」
「俺はそんな薄情じゃねーよ!」

お前ん中の俺はどんな酷い奴なの、とぎゃあぎゃあ言う矢巾にあわあわと返答に困っていると、唐突にふっと笑った。
そういや、二週間くれえなんだな、と言って。

「二週間?」
「お前と会ってから。なのになんか、すげー濃いっつうか」
「……そう、だね。特に出会いは衝撃的だった。物理的に」
「……悪かった」
「いいえ、感謝していますから」

今日も夕方、見に行かせて貰いますね、と笑っていったら。
少々ぶっきらぼうに、おう、と頷いてくれた。


 
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