腹を割って
話しましょうか

 


先日のあの軽はずみな発言は、やはり彼の気に障る物だったのだろう。
昨日も一昨日も、彼は昼に来なかった。

嫌われてしまったかもしれない。
せっかく、仲良くなれていたのに。
それも私の錯覚に過ぎなかっただろうか。

もう一度、謝ろう。
そう決めながら帰る支度をして昇降口に行く、と。

「……よう」
「……や、はば、くん」
「あー……なんか久しぶりな感じする、な」
「あっあの、私」
「謝るなよ!」
「……っ!?」

昇降口は声が響く。
急に声を張った彼にびくりとすると、悪い、と小さく言って、しかし重ねて、謝るな、とまた言った。

「お前は悪くないから。俺が八つ当たりしちまっただけ。そんで、まあ、だから、会いづらかったのと、昨日は練習試合で昼は学校に居なかった、から」
「練習、試合……」
「……おう。まあ、その、なんだ」

小さく。本当に小さな声で。
勝ったよ、と、言った。
私はと言えば、またそれを鸚鵡返しに呟くしかできなかったけれど。

「……だから、弓長とちゃんと話、したいと、思って」
「え」
「この後時間ある?」

遠慮がちに言われた言葉に、私はこくこくと頷いた。

すこし過ぎるくらいに暖かいファミレスの店内で、汗をかいたグラスのストローに口をつけた。
私はアイスティーに、彼はコーラに。
同じタイミングだったものだから、思わず二人で笑ってしまった。

「……私、矢巾くんに嫌われてしまったかと思いました」
「……悪い」
「いえ、違ったみたいだから、いいんです。……よかっ、た」
「あのさ、弓長」
「はい」
「俺、すげーしんどいんだ、今」

からんと氷の動いたグラスをじっと見ながら言われた言葉に、静かに頷いた。
昼食時の騒がしい店内。
静かに語られ始めた彼の言葉を、一言も聞き漏らさないように。


 
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