黄の歓喜

 


「えっ湊っち第二外国語フランス!? ほんとッスか!? やった!!」
「え゙っ」
「ね? いつ? 水曜の3限?」
「え゙っ」
「やった!!!」

おんなじ講義ッスね!! とテンション高く飛びついてきた黄瀬に、藍川のライフは既にゴリゴリ削られていた。

まるで会話になっていないが、黄瀬の理解力を見るに、藍川についての理解と、彼女に自分がどう思われているのかはそこそこ自覚があるのがわかる。

「なっ、なんで黄瀬仏語とかなの……」
「フランスかイタリアで悩んでたんスよ〜。最近仕事でなんかそんな話出て来てて。結局時間割の空きが丁度よかったのがフランスだったんス! マジよかった!」
「このくそデルモ……」

遠い目をしながらも暴言を吐くのを忘れない藍川に黒子が相変わらずプッスー、と笑った。

「僕第二外国語中国語なんですよね。残念です」
「……えっ」
「えっ?」
「は?」
「僕、第二外国語、中国語取りました。ちなみに、金曜の、2限です」
「は?」
「え? 君、まさか外国語三つも取ってるんですか?」

藍川にとっては残念ながら、黒子の言うとおり藍川は外国語講義を三種類組み込んでいた。中国語は単純に空き時間を作りたくなかったわけだが、完全に仇となったようである。

ところで黒子ともやはり大概会話にはなっていないが、まあ黒子には藍川の理解と彼女内の自分の評価なんてとっくに判りきったものであろう。伊達に一番長く縁が続いてない。藍川にとって不本意であろうとも。

「時間割組み直したい……」

これで授業も安心ッス、とぎゅうぎゅうと絡んでくる黄瀬の鳩尾に寸分狂わず見事な肘鉄をかましながら、藍川は思わず遠くを見つめていた。


 





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