赤と青の出席
人間早々変われないものである。
それはつまり、誰かに対する周りの反応も対して変わらないものになるわけだが。
つまりなにかと言うと、だ。
藍川は現在、次の講義室で同じ講義を受ける女子グループの会話に聞き役として混じっていたのだが。
「あれっ? ねえ見て!」
「えっ、この講義取ってたんだ……!」
「ていうかこっち来るよ!」
きゃあきゃあと彼女達が弾んだ声を上げる中、藍川は一人ぐったりげんなりしてみせた。
「ねえ」
「はっ、はい!」
「話をしてるところ悪いんだけど、彼女借りるよ」
「……やなんだけど」
「大輝、連れてきて」
「おう」
画して、颯爽と現れた"赤司様と青峰くん"は、女子グループの中から藍川を連れ出して教室の隅に連れて行く事に成功したわけである。
「あいっかわらず知らない奴の前だと偉そうねあんた達」
「湊があんな人達と一緒だったなんてビックリしたよ……」
「心臓に悪いぜマジで」
「こっちのセリフなんだけど」
赤司と藍川で青峰を挟む形で座り、三者三様に溜め息をついた後、藍川は舌打ちをした。
あの女子グループと次にあった時がめんどくさそうだという思いと、ひたすらに二人が面倒だという二乗のめんどくささに苛まれて頭を抱えた。
「なんなの本当……」
「出欠が取られないから僕達今までこの講義に出てなくてね」
「でしょうね。今まで居なかったし」
「で、僕は良かったんだけど、大輝が試験落としそうって言うから」
「いっそ落としちまうかと思ったんだけどよー、さつきがすんげえキレて」
「ああ……」
「超怖かった」
「で、湊は出てるんだろうし、大輝に教えてくれたらと思って」
語尾に、言われなかった「構わないよね」、という言葉が聞こえた気がして、青峰の足を思いっきり踏んづけた。
「いっ……!!」
「それにしてもあの子達怖いな……超こっち見てる……湊連れて来たくらいでそんなに怒らなくてもいいのに」
と、思いっきりズレた言葉に溜め息をつき、ていうか湊にも友達居たんだね、なんて失礼甚だしい発言にぶっ殺すぞと言いながら背中を殴る位でその場は止まることにした。