宅飲み再び

 


国見宅の訳あり騒動にも懲りずに、宅飲みしようぜ、という話が持ち上がった。
流石に国見の家に、という案はどこからも上がらなかったが、今回は俺んちちょっと狭いかもだけど別にいーよ、という花巻の言葉に乗って集まった。

家主である花巻の予定に合わせた為、結局仕事の都合がついたのが私と松川、岩泉と及川だけで。普段の人数を考えると少し寂しい。
が、及川の「偶然だけど俺らだけになっちゃって、なんか同窓会みた〜い」なんてきゃらきゃら笑った言葉に、そう言う捉え方もあるか、と頷いた。

で、まあまあ酒やらつまみ類を少々持参して行った。

「いらっしゃーい。多分5人なら丁度良いと思うからテキトーに座って」
「お邪魔しまーす」
「おっじゃましまーす」
「お邪魔します」
「お邪魔ー」

言われたとおり、バラバラと好き勝手テーブルを囲んで座った。
想像していた通りだが、花巻の部屋はさっぱりしていて、掃除も行き届いていた。男の一人暮らしのわりには綺麗すぎるくらいだ。

ふと花巻に頼まれたものがあったな、と思い出して机に広げた。

「花巻ー、作ってきたよ。卵焼きときんぴらとおひたし。あと適当に煮物。最近は中々作らないものばっかりだったけど……あ、卵焼きは甘いのが好きだったよね?」
「うわっ、マジで? 全部作ってくれた? サンキュー保科俺お前のこと好き」
「はは、はいはい」
「こないだもちょっとつまみはあったけど、保科ちゃんのちゃんとした料理って高校ぶりだね〜」
「この量って、俺らも食っていいのか?」
「うん、勿論どうぞ」
「つーか花が頼んだの? なんで? お前料理はプロじゃん」

そう。花巻の職業は調理師だ。きちんと免許だって取得済み。
その腕を生業としているのに、なぜわざわざ私に作らせたのか、私も聞きたかった。

尤もすぎる筈の問いにばか、と言って卵焼きを一つ口に入れてもぎゅもぎゅと咀嚼しながら。

「仕事で料理してっと家でやっても仕事の延長線みたいでいやになってくんだよ。あとお前ら来るならお前らに料理してもいいんだケド、自分一人の為に料理すんのすんげー虚しいから。どんだけこだわっても披露する相手居ねえし愛情も手間暇もクソもねえよ。最近家ではずっと生野菜かじってる」
「ちょっと嘘でしょマッキーちゃんと食べて!!」
「花巻、今度飯行くか……酒抜きで……」
「うん、行く」
「そんな酷い理由だったならもっと色々作ってあげたよ……」
「大丈夫、いつでも受け付ける。彼女出来るまでは」

予想の斜め上をかっ飛んだ最近の花巻の食事事情に、私達が目を剥いた瞬間である。
気持ちは判らないでもないがこれはいくらなんでも酷すぎる。

「……じゃあ、保科だけに料理を頼んだ理由は?」

松川のこの問いへの答えは、どうせなら野郎の料理よりも女の料理がいい、気持ち的に、という単純なもので、私達四人はうっかりほっとしたのだった。


 
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