在宅もどき

 


いつものとこもいいけど、みんなで色々持ち寄って宅飲みもいいよねなんて言い出した。
当然言い出しっぺが場所提供するかと思いきやうち狭いし、の一言にあえなくその案は撃沈するかに思われた。

「うち、物少ないんで多分全員いけます。あと来月まで俺在宅もどきなんでその間ならいつでもいいですけど」

なんて言葉を、まさか国見から頂戴するとは思わなかったからだ。

紅一点としてのなけなしの意地を振りかざして簡単なつまみ類を持参して教わった住所に向かう、と。

「……えっ?」

ロビーはオートロックのセキュリティー設備のしっかりした、そこそこお高そうなマンション。何度もメモを見て確認しても間違いではなく。
ずらりと並んだ郵便受けの中に、確かに国見と名前が入っていた。

恐る恐る部屋番号を押して呼び出すと、はい、と後輩の声。モニターには、後輩の顔だ。

「ああ、保科さん。今開けます。部屋も鍵開けとくんで勝手に入ってください」

ガーッと開く自動ドアの中に恐る恐る踏み入って。
エレベーターに乗り、宣言通り鍵の掛かってないノブを捻ってお邪魔します、と中に入った。

「まだ誰も来てないです。酒の前にコーヒー飲みます?」
「あ、ありがとう」
「いや、ていうかすいません俺仕事やってたんで」
「あ、いいよ、邪魔しないように大人しくしてる」

マグカップを受け取って、あまり褒められた行動ではないと知りつつきょろきょろ見渡してみる。
ひっろ……! いやひっろ……!!
物が少ないんで、なんて言っていたがものは普通にある。
が、リビングが普通に広い。ていうかなんだこれリビングダイニング?
しかもまあ寝室は別らしい。恐らく寝室と思われる扉が、パソコンデスクの奥にある。

「あ、あんた、こんなとこに住んでたの……!?」
「? ええ、職場から近いので」
「高いでしょ!?」
「いえ、そんなに。7万しないくらいですね」
「ななまん……!?」

なんてことだ。こんなセキュリティーのしっかりしていて、駅からも程近くコンビニやスーパーにも手軽にいけるような立地のいいところに住んでおきながら7万だと。
どういう事なの、と愕然としていると、軽快なインターホンが鳴った。


 
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