長所短所も程々に
それはいつものあの、ほんのちょっと虚しい集まりで。
「えっ岩泉あんたなんでいんの?」
「……答えは一つだろほっとけよ」
「あ、うんゴメン」
かなりマジで落ち込んでる岩泉と、彼を囲んで苦笑する同級生達と、またその周りでわたわたする後輩達の姿。
二週間くらい前だったか、その時に集まった時には彼の姿はなくて。
その代わりに、及川が「岩ちゃん彼女が出来たんだよ」という知らせを持ってきていて。
てっきりもう戻ることは無かろうという認識だったが、いた。それはつまり。
「まあ今日は飲めよ岩泉。お前の気持ちは痛いほどわかるぜ」
「花巻……おう、さんきゅ」
「……ねえ松川、どういうことなのあれ」
注文を取りに来てくれた女の子にいくつかのつまみと酒を頼んでから、バシバシと松川の肩を叩いて訊ねる、と。
ビールのジョッキを傾けながらからからと笑った。
「まあ、彼女にはフられたらしいんだけどさ」
「うん。ていうか岩泉ってフられんの?」
「なんか、なんでも出来すぎてヤダっつってフられたんだと」
「あっ……あー……」
仲が良いからという贔屓目の所為ばかりでなく、岩泉はとても出来た人間である。
他人を思いやることは勿論、場の空気も読めるし多分仕事振りも悪くない。収入だってこうして飲みに来れる程度に余裕があって、無駄遣いもしない主義。堅実に貯蓄しつつ家事もそれなりに出来るはず。
あれっ……ほんとに出来ないこと無いなこいつ……。
「なんでも出来なきゃ嫌だって言うくせに出来たら出来たで嫌だとか女は男にどうしてほしいんだよ」
「あー……まあ、理想と現実の差ってやつだね」
理想を言えば、あれやこれやと理想を盛り込んで行くものだけど、最終的に突き詰めれば現実は案外シンプルなのだ。
相手がなんでも出来ちゃったら、プライドもズタボロになっちゃうし。
「岩ちゃんもマッキーも保科ちゃんのこと笑ってらんないじゃない」
「保科の男運と同じくらい女運ねえなお前ら」
「この飲み会にずっと参加してるお前らも同じだからなそれ」
「そーだそーだ。及川だって他の女が群がってもお前が拒絶しねーから嫌だってフられてんだろ」
「私を引き合いに出すのやめなさいよ。悩みが贅沢なのよあんた達は」
過ぎたるは及ばざるが如し、と言うことらしい。
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