邪推して笑うのが楽しい時期

 


仕事関係での外出からの帰り道。
せんせーさよーならーっ、なんて、賑やかなきゃらきゃらした声に思わず振り向いた。
振り向いた先にあったのは学習塾で、小学生達が親の迎えの車や、送迎バスに乗り込むところで、そんな子供達ににこやかに手を振っていたのは。

「渡?」
「え。あ、保科さん。お仕事ですか? お疲れ様です」
「私の台詞だわ。お疲れ様。塾、ここだったんだ」

ちらりと見たワイシャツの襟や、ネクタイがよれよれになっている。
見苦しいとか、見るに耐えないとかではないのだけど、なんとなく昔世話を焼き回した所為か、手が出た。

「襟とネクタイ、よれてる」
「えっ、あ、すみません、あの」
「塾講師ってそんな動き回るの? はい、できた」
「ありがとうございます。いえ、そうじゃなくて、今担当が」
「せんせーのカノジョ?」
「……ん?」

割り込んできた声に視線を落とした。
いかにもおもしろい物を見たと言うような表情をした、男の子が三人。

「違う違う、先生が高校生の時の先輩」
「元カノ?」
「違うってば! ほら高橋くんお母さん待ってるよ、伊藤くんと斉藤くんはバスでしょ」
「渡せんせーカノジョいたんだー! なー、みんなー!」
「こら嘘を言いふらさない!」

そうか、小学生ってこんな感じだったかも。
なんか、無駄にはやし立てたりとかして。

「……なんか、ごめんね?」
「……いえ、すみません」
「……ちなみに、何年生?」
「……三年生ですね」

うん、だよね。

余談だが、この後一月ほどはいろんな生徒達にカノジョ(ではないし、私なのだけど)についてのネタで生徒達に絡まれたらしい。

なんかほんと……ごめん……。


 
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