マジで切れる5秒前

 


何度目かの集まりの時。
すみません遅れます、もしかしたら行けないかもと国見からメールが入った。

どうしたんだろ、なんて話をしながら飲んでいると、集まってから二時間後。
ヤケに荒い足音を響かせながら、眼鏡を掛けた国見がやたらと不機嫌な顔で遅れてすみません、と言った。

「お、お疲れ国見……どしたの、大丈夫? お茶飲む? これまだ頼んだばっかで手つけてないから」
「保科さんあざっす……あー、くっそ」
「やけに荒れてんな」
「てかお前眼鏡だったっけ?」

首を傾げた金田一に、ああ、と言いながら怠そうに眼鏡を外し、畳んでシャツの胸ポケットに差した。

「パソコン眼鏡ってやつ? なんかブルーライトを反射するっての。今までデバックしてたから」
「でば……?」
「プログラムのバグの修正作業です」

あのクソSE、自分はとっとと帰りやがって、とぼやきながら烏龍茶を煽る国見の目は荒んでいた。
珍しく、彼が自分からなんか肉下さいと言ったのに周りがやんややんやと肉系の料理を皿に盛っていると。

国見のスマホが震えた。
すみません、と言いながら確認した直後。

彼の手許から、みしり、と。スマホの軋む音がした。
そして。

「上も下も使えねえな……職場変えっか……」

とぼそりとボヤいたのが、隣に座っている私の耳にのみ、しっかり届いてしまった。


 
[ 10/21 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -