仕事は悪くない
松川の風邪もすっかり完治した頃の集まりで、保科や及川、岩泉によって花巻と松川の自堕落さが後輩達にも知れ渡る事となった。
「花巻さん生野菜って……!」
「安心しろ渡。まだ生肉食うには至ってない」
「なにも安心出来ませんよそれ! ちゃんと食べて下さいよぉ!!」
「ちょっ、わかっ、わかったから俺の皿に肉を盛るな金田一! 酔ってんのかお前!」
「松川さんも病院行きましょうよちゃんと……」
「おう、医者にも言われた。つーかホント悪化したもんだから注射だのなんだので結局加算増えたんだよほんとねえよ」
「先輩、それ俺達のセリフです」
心配されたり、その延長線で情け無くも後輩に叱られたりする二人を、三人はざまあ、という視線で見つめていた。
良くも悪くも、彼らは五人とも後輩に対する愛情を最大限に拗らせているので。自分達の誰か、からの言及よりも、後輩達の誰か、からの言及の方が効果的なのである。
とりあえず、ぎゃあぎゃあと一通り心配し尽くされた二人は、まあまあと後輩達を宥めて。
「お前らの気持ちはありがたーく受け取る。うん」
「けどまあ、あれだ。今回のはさ」
「「一種の職業病ってやつ」」
声を揃えて、しまいには「だよな」「そうそう」、とお互い顔を見合わせ頷きあったりするのだから。
「あんたたち反省してないでしょ」
保科は大きな溜め息をついてグラスを煽った。
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