05

 


ふらりと気紛れに立ち寄った本屋。
そこに見知った背中を見つけて、また気紛れに声をかけてみた。

「花宮さん」
「! お前……」

一瞬だけ珍しい驚いた顔をして。
にぃ、と口角をつり上げて笑った。

「ふはっ、女子高か。柄じゃねえな」
「あら、そうですか? 私これでも結構馴染んでますよ」

前より背が高い。
私自身も伸びてはいるが、しかしやはり相手は男。しかもスポーツマン。
心なしか記憶の中の彼よりも、体格もしっかりしている気がする。

「……なんだよジロジロ見て」
「ああ、いえ。たいしたことでは」

ぴくりと不満げに眉が動いたのに笑いをこらえる。
中々わかりやすい人だ。

「花宮さんも意外と、真面目にバスケなさるんだなあ、と」
「あぁ? 喧嘩売ってんのか?」
「まさか。私、そんな命知らずじゃありません」
「はっ、相変わらず減らねえ口だな」

思い通りにならないと気が済まない。まるで子供だ。賢い子供。
もちろん彼女は命知らずではないので、そんな言葉は口には出さない。

変わりに、バッグの中でカシャンと音を立てたそれをするりと取り出して。

「お時間あるなら、久々にご一緒しませんか」
「へえ? 多少はうまくなったのかよ?」
「身近に勝負してくれる人が中々いなくて困ってるんです」
「ふはっ、上等じゃねえか」

精々健闘しろよ、と意地悪く笑うその顔は、彼女の知ったものと同じだった。


 
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