04

 


「花宮さんていいですよねえ」
「は?」

少し埃っぽい空き教室。
毎週水曜日、昼休み。彼女と彼らはそこにいた。

全員が別々の高校へと進学していく、前の話。

突然彼女が詰め将棋をしながら呟いた。

なんとも理解しがたい言葉に、思わず間抜けな声を上げて、将棋盤から彼女の方へ視線を向けた。

「今吉さん、そう思いません?」
「ん? 君、あんなんがタイプなん?」

確かにええ性格してるとは思うけどなあ、と続けて呟くと、そっちの意味ですよと笑った。
ああ、なんだそう言うことか。

今この場にいない後輩を脳裏に思い浮かべ、さすがにあれの本性を知った上で好みのタイプなんて言う女子はちょっと趣味が悪すぎる気がする。
まあ自分とて他人の事を言えたものではないが、少なくとも人並みの良心くらいは自分は持ち合わせているつもりだ。

「まず花宮さんて良心が存在して無いじゃないですか」
「おーおー、容赦ないなあ。まあワシも今同じこと考えとったけど」
「でしょう?」

くすくすと笑いながらぱちんと駒を動かす。

「必要悪とか、そう言う生温さや中途半端が無いんですよねー。なんて言うんだろ、」
「絶対悪、とか?」
「あー、そんな感じですね。兎に角その悪、が揺らぐことが無いじゃないですか」

まあ、今吉さん以外には、とは言わないでおいた。

かわりに、あそこまで徹底されれば清々しくて良いです、という感想を添えた。
すると、からからと今吉は笑って。

「なにせ"悪童"やからなあ」

愉快そうに呟いた。


 
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