04




「あれっ、冴子姐さんじゃないスか」
「おっ、なんだなんだ久しぶりじゃんか! 元気してたかー? おい!」
「おふっ……! げ、元気ッスめっちゃ元気です」

冴子姐さんには負けますけど、とは口に出さず心の中で呟くにとどめた。

友人達の晴れ舞台、こっそり応援に来てみれば、その友人のうちの一人のお姉様(姐御)がいらっしゃって。
ガッシリと盛大に肩を組まれてガクッと膝が落ちるとともに全神経が組まれた肩に行ってしまうのは健全な男子高校生の悲しきサガである。
傍らにいる後輩に下心がバレて軽蔑されないことを切に願いながら、姐さんも応援ッスか、もへらりと笑いかけた。

「おうよ! かわいい弟の勇姿をな!」
「いいっすねえ……俺も冴子姐さんみたいな姉貴欲しかったっすわ」
「わはは! そうだろそうだろ!」

手すりを掴んで豪快に笑い飛ばして、下のコートを見下ろす横顔をちらりと見る。
今日もカッケーなあいつら、と笑う弟の友人に溜め息を一つ。

「はあ……お前が女子ならなあ」
「なっ、なんすかいきなり……」
「お前龍のかっこよさわかるじゃん?」
「あー……あのね姐さん。あいつらは男にモテるかっこよさっすよ。女子受けすんのはあっちのノッポくんとか、スガ先輩じゃないすか?」
「やっぱそーかー……」

お前が女子で龍と付き合ってくれたらなあ、なんて。ちくしょう、と本気で悔しそうにトンチンカンな理想を持ってきてしまうあたり、本当よく似た姉弟だなと思った。言わないけど。

賑やかなアップの声を聞きながら、コートの方を見下ろしながら。

「俺はどっちかというと冴子姐さんの婿のほうがいいっすけどね〜」
「んなっ!」

予想外に言われた軽口に、驚きつつも馬鹿か十年早いよ、と笑い飛ばして後頭部を叩いた。


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