03




ふんふんと鼻歌を歌いながら足取り軽く、小銭を握り締めて学内の自販機に気持ちスキップで向かう、と。

去年仲良くなった先輩女子の、むっちりしたお尻。

「ふんふんふ〜……うおっ!?」
「へっ?」
「み、道宮先輩? なにしてんですか??」
「えっ? あっ? うわわっ」

自販機の下に潜り込んでしまった小銭を一生懸命拾おうとしていると、大袈裟にかけられた声に振り向く。
去年同じ委員会で話すようになった後輩がやけに慌てていたので少し起き上がって気付く。スカートが随分せり上がっていたらしい。

パッと慌てて裾を抑えて立ち上がる。

「えっ……とね」
「あっ大丈夫です見てないです見えてないです安心して下さい!」
「わっ、わっ、わかったから!」

あわあわと赤い顔で止められてぐっと口を噤む。

き、気まずい……。

「えっ、と、道宮先輩、一体何を……?」
「あー……のね、自販機の下に百円玉落としちゃって」

百円1枚しか持ってなかったし、頑張れば取れそうかなって思って、と苦笑した。

おかげでこんな場所で危うく下着を大公開するところだったのだけど。

そう考えると恥ずかしかったけれども未遂に終わったのだから、彼が丁度来てくれて良かったと思う。

「あ、そうだ、ごめんね、邪魔だったよね。どうぞ、先に買っちゃって」
「あ、はあ、あざす」

すっと横に避けてくれた先輩に甘えて一歩前に出て小銭を投入。
それから、3秒くらい考えて。
いつもは買わないリンゴジュースを押した。

「先輩、どーぞ」
「え」
「だって、自販機で札崩すのってなんかヤじゃないっすか?」
「そ……れは、そうだけど、なんでリンゴ……」
「だって先輩、去年もこればっか飲んでたもん」

何て事なさそうにへらりと笑った後輩に対して、しどろもどろにお礼を言って差し出されたリンゴジュースを受け取るのが精一杯だった。


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