03




「緑間は秋と言えば?」
「フン、読書の秋に決まっているのだよ」
「それには僕も同意します」
「俺も異論はないな」
「おお……流石」

「そう言えば先日秋の読書フェア? っていうのを少し覗いてみたんだけど、お前たちの好きそうなのが並んでいたよ。チェックしたかい?」
「いや、見ていないな……なんというタイトルだったのだよ?」
「緑間が好きそうだったのは確か翡翠の匣だったかな。シリーズものらしいんだけど、前に読んでなかったか?」
「翡翠の匣……ああ、前作を読んだのだよ。翡翠の容と言うものだった。新人らしいのだがいいミステリーなのだよ」
「あ、前作はわかります。と言っても読んではないのですが、確かデビュー作でしたよね?」
「ああ。お前はミステリーをあまり好まないようだったが、あれは読んで損をするものでも無いのだよ」
「そうですか……では今度機会があれば読んでみます」
「ああ」
「緑間がそこまで言うなら俺も読んでみようかな。ああ、それと、黒子が好きそうだったのは紅葉の記、だったかな。知ってるかい?」
「紅葉の記……ですか? 読んだことはないと思いますが……あ、もしかして、作者が木端微塵という人ではなかったですか?」
「うん、確かにそんな名前だったな。変わった名前だったから覚えてるよ」
「僕の好きな作家なんです。最近中々新作が上がってこなかったんですが……出ていたんですね。早速今日買って帰ります。ありがとうございます、赤司くん」
「いや、構わないよ。俺も自分の読む本を探すついでだったから」
「赤司くんはなにかいいのが見つかりましたか?」
「いくつか目星をつけてはきたんだけどね……」

「……あんたらあれ見習ったら?」
「あっちサイドは基本的に面倒なことを好んでやるタイプだから俺らとは違うし」
「紫っちの言うとおりっすわ」
「読書なんか漫画で十分だろ。そういや今度新刊出んだよ本屋行かなきゃだわ」
「あ、俺の特集組まれた雑誌出るんスよ今度! みんな買ってね!」
「黄瀬ちんうざ」
「ンなもんに金出さねーよ」
「雑誌によっては仕方なく買うかも知んない。なんて雑誌?」
「みんな正直過ぎッス! 酷い!」
「なによ私がちゃんと雑誌聞いてんのに」
「めっちゃイヤイヤだったじゃないすか」
「そうだよ」
「酷い」

「あっ、わかった。私があんたたちにオススメの本を教えてやろう」
「はあ? いらねーし」
「字読んでると眠くなるからいいわ」
「俺も頭痛くなるッス」
「揃いも揃って重症だな。大丈夫私が小学生の時に読んだやつだし、確かうちの図書室にもあったし、絵も多いやつだから」
「えー……まじで読めって言ってんの?」
「めんどくせえ……」
「なんかそこまで言われたら俺気になってきた」
「まあまあちょっと待ってな5分くらいだから」

「……で、とりあえず一冊だけは買ったんだ。今日また帰りに寄るつもりなんだが、お前達も行くか?」
「いいんですか?」
「ああ、俺の読まない部類で面白いものがあったら教えてくれ」
「そういうことなら俺も―――」
「グズッ……! んだよクソッ……」
「なんなんすかこれ……!」
「ええー……二人ともマジ?」
「……なんなのだよあれは」
「え、青峰くんと黄瀬くん、泣いてません?」
「おい、お前、なにをした?」
「なんで真っ直ぐ私を疑うの?」
「どうせ原因なんだろう」
「うんまあ……そうだけど」

「はあ。絵本ですか」
「うん。それなら読めると思って……」
「そうやって盛大に馬鹿にしたつもりだったんだな」
「そう。そうなんだけど、なんか思いの外三人とも見入っちゃって……」

「ちょっ、きたねーんだけど! こっち来んな!」
「なんで紫っち平気なんスかぁぁぁあああ」
「むしろなんで号泣してんの? 意味わかんねーんだけどうわっ、峰ちん顔やばっ」
「うるせえ泣いてねえ」
「俺そんなこと言ってないしボロ泣きだしちょっと面白いから写メっていい?」
「ふざけんな!」

「……いやー、まさか絵本で号泣する程純粋なやつらだとは思わなくてさ」
「あの二人は毎年節子に号泣してるらしいんですからやめてあげてくださいよ」
「それは知らなかった。今度から気をつけるわ」



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