03
「大丈夫だって今日蠍座占いで1位だったからラッキーアイテムは水風船だったから!」
「そのために私にわざわざヨーヨー釣りさせたのかよ!?」
喧騒の中でも目立つ、色素の薄い背の高いイケメン。
クラスメートだと知っていればなんのことはなく、一緒に来ていた兄弟とはぐれた私は背後から声をかけた。驚かすつもりで。
しかし、ゆるりと振り向いた彼は、何故か無言で私の手に小銭を握らせて。
「お前ちょっとあれ一個取ってこい」
と、今までじっと遠巻きに見つめていたらしい屋台を指差した。
色はオレンジな、と何故か細かい指定まで頂き、見事こよりを駄目にすることなく釣ってきたら、今度は向かいの屋台に連れて行かれ。
「とりあえず四回頼む!」
「はいよー」
冒頭……というか、今に至る。
祭りの屋台が出るといくつか見かけるクジの屋台。
その中の一つであり、私ならいつもみたくくだらないと素通りするのだけど。
アイドルグッズのクジの屋台、展示された景品の中にみゆみゆを見つけてしまったファンは、完全にスイッチが入っている。
大きな手にオレンジ色の可愛らしい水風船をぶら下げて、しかし。真剣な顔でクジを引くイケメン。
シュールだ。シュール過ぎる。
「やめなって宮地ー……どうせ出ないよ」
「うるせえわかんねえだろ!! チッ……マミリンか……」
大坪にやろう、といいながら私に景品を流してくる。これはこのまま荷物持ち確定だな。
諦めて見ていたら、ハズレ、ハズレ、ハズレ、と、見事惨敗だった。
「クソ……!」
「ほらー……だから言ったじゃん」
「ふざけんなよおは朝!」
「おは朝悪くないから!」
謎の鬼畜占いを無闇に貶し始めた宮地を宥めて、ポケットに入っていた500円玉を何気なしに店のおっちゃんに差し出して。
何気なしに一枚引いた。
「……三等」
「ハァ!?」
「はい、おめでとう〜三等はこれね」
「あ、あざす」
おっちゃんがくれたのはまさしく、宮地の推しメン、ポニーテールの可愛いみゆみゆだった。
目をひん剥いて私(が持つみゆみゆ)を見つめる宮地は、これぞまさに残念なイケメン、と称するに他なら無いものだった。
「……そういやおは朝友人に助けて貰える絶好の日っつってたわ」
「ほう。私焼きそば食べたいんだけど」
「任せろ」
戦利品、マミリンとみゆみゆのグッズを抱きかかえ、焼きそばの屋台を探す宮地の後ろをはぐれないようついて行くのだった。
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