05

 


ピーッというオーブンの停止音に従って焼き上がりを確かめる。うん、悪くない。
さて、今からこれを冷やして、忙しいのはここからだ。

「うーし、いっちょやるかぁ」

ぐりぐり肩を回して、気合いを入れる為に一人ぼそりと呟いた。

そして、それから、多分3時間後くらい。
家を出た側の川縁で、三人仲良く並ぶ背中を発見。

「おーい、縁下くん、木下くん、成田くん」
「あ、村長さん」
「なんすかー?」
「あああ待って今引きが……! ……あっ」
「……えーっと」

魚釣りをしていたらしい三人に声をかけると、縁下、木下の二人は振り向いてくれたが成田の竿になにかが食い付いた。
なにが釣れるかと楽しみにして見守ってみたが、結果釣れたのは長靴だった。どんまい……。

少々落ち込んだ様子でなんですかと改めて振り向く。

「これ、良かったらおやつにでも食べて」
「? 開けても良いですか?」
「うん。我ながら良い出来映えだよ」
「おーっ! タルト!」
「これ……オレンジ?」
「そう、私の地元はオレンジなの。昨日母が送ってくれて……みんなにお礼もかねてお裾分けしようと思って!」

元気よく、三人揃っての「アザーッス!」という返事を貰ってにっと笑う。

他の住民達にも、商店街も、リサイクルショップと役場にも。
今日はこれを配って回る。
次は橋の向こうに行こうと、早速食べ始めていた三人に手を振って踏み出した。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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