04

 


役場にて、武田にこれからどうしようかと相談したところ。
武田の実家から送られてきたと言うさくらんぼを三つ頂いた。
と言う話をしたら、じゃあ俺が穴を掘るから埋めよう、と言ってくれた日向と村を駆け回ったのが、数日前。

「そんちょー!」
「はあーい?」

私が村長と呼ばれるのもすっかりなれた頃だ。

新しく増築した二階の模様替えの最中、窓の外からした声に顔を出すと、日向が飛び跳ねていた。

「さくらんぼ! なってるぞ!」
「おっ、ほんと? 待って、行く行くーっ」

慌ただしく部屋を出て、ソワソワしていた日向とまた村を駆ける。
さくらんぼは、役場の側と広場の側、それから駅の側に植えていた。

たわわになっているさくらんぼを見て、おおお……と無性に感慨深い気持ちになる。
せっかくなので駅の一本を揺らして、さくらんぼを収穫した。

「はい、日向くん!」
「! いっ、いいの?」
「独り占めとか私すごく心狭いじゃん……それに日向くんと植えたさくらんぼだからね」

にっと笑うと、ありがと、と日向もにっと笑った。可愛いじゃないか。

もう一つのさくらんぼは、また植えようかそれとも別の誰かにあげようか、と迷っていると。
虫取り網を担いだ影山が通りかかった。

「影山くん」
「?」
「さくらんぼ、好き?」
「……くれるンスか?」
「どうぞ! 美味しいよ!」

ブスッとした顔(いつもだけど)で受け取るが早いか、彼はペロリと食べてしまった。よい食べっぷりだ。食べている間は妙に幸せそうな顔をしていたところを見ると、どうやらフルーツは好きらしい。

ありがとうございました、とまた彼は鋭い目つきで虫取りに行ってしまった。な、なにを捕まえるつもりなんだろう……。

「そんじゃ村長、俺も行くな!」
「ん? あ、ああ、うん。頑張ってね」
「おう!」

いつの間にやら携えた網を振り上げて、また彼は慌ただしく走っていく。そんなに走ると虫は逃げちゃうんじゃないかなと思いながらその後ろ姿を見送って家に戻った。

結局それ以外の時間は、二階の整理と一階の模様替えに1日を使ってしまって、気付けば室内には夕日が差し込んでいた。

あらまあなんて台詞と共になんとなく確認したポストには手紙が届いていて。
母からの手紙、それから一緒に送られた小包を見て、ふむ、としばし考え込んだ。


 
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