04

 


帰り道、立ち寄った本屋で生徒手帳を拾った。
近所の公立高校二年の女子。
カウンターにでも届けようかと振り向いたら。

「あーーーっ! 君! そこの眼鏡のでっかい君!」
「っ!?」
「それ私の生徒手帳です!」

やかましく叫びながら駆け寄ってきた女子に生徒手帳を渡すと、受け取ってからほうと安堵の息を吐いた。

「よかったあ見つかって……! 拾ってくれてありがとうね!」
「いえ……まあ今後は気をつけるのだよ」
「うん、そうします」

へらりと笑って、あっ、そうだあいつにも見付かったって言わなきゃ、なんて携帯を弄る。
一人で賑やかしくて、誰かを見ているような気分だな、なんて呑気に考えて踵を返そうとした時。

「もしもし虹村ー? みっけたみっけた! てか他校の男の子が拾ってくれてた! 本屋のとこ!」

聞き慣れた、珍しい名前に足を止めた。
よくないとは知りつつ聞き耳をたてれば、

「あぁ? お前ぜってえ違うとか言ってた癖にかふざけんなよオイ明日覚えとけよ」

と、やっぱり聞き覚えのある声が微かに聞こえた。

ごめんごめん、なんて軽く言って電話をきった彼女を引き止めて。

「……今の、電話の相手は」
「……おや。もしかして君も帝光中バスケ部出身かい? キセキの世代ってやつ?」

君も、という言葉に若干首を捻ったものの、頷いた。

本屋の中に、カフェテリアのような一角がある。
その角の席に座って、とりあえず自己紹介をした。

「ふうん……緑間くん、か。てことは、確か君はとんでもないシュートをかますんだったかな」
「……まあ」
「副将だったっけね。うん。第一印象は一番変なやつだったけど、慣れれば許容範囲だし一番いいやつだったって」

言ってたかなあ、なんて笑った。

多分彼女自身、バスケに興味は無いんだろう。
けれどだからこそ余計に、先入観や彼女の主観のない、虹村の言葉がむず痒い。

彼女は最近、黄瀬、青峰、黒子、桃井に会ったらしい。
いったい何の因果か知らないが、それなら関東圏にいるキセキの世代にはこれで全員会ったことになる。
あとは秋田に紫原が、京都に赤司がいるが、まあまあ絶望的だろう、物理的距離の問題で。

「聞かれ飽きたとは思いますが、虹村さんは」
「バスケは今はやってないよ。やる気もなさげ。でも授業のバスケはまあまあ楽しそうにやってるし……ああでも」
「?」
「君達の事は、ずっと気になってたみたいだけどね」

へらっと、なぜか彼女は満足そうに笑って、そう言った。


 
[ 26/49 ]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -