03

 


受験勉強に勤しんで、その結果が出る前に私達は三年間の高校生活に終止符を打つことになる。
近付く別れに恐々としたり悲しみに暮れたりする事もない。私達大学受験組はそんな事よりも先の受験結果に恐々としているのだ。だから、思うのはこんなものか、とか。意外と呆気ないなと思う。

「高校時代の友人は一生の友人なんて、ほんとかなあ」
「……どうした、急に」
「んー……理屈は判るんだけどね。けど、私、卒業したら誰とも連絡取らなくなっちゃいそうだなって。思うんだ」
「うーん……そうかあ」

小学校、中学校では幼すぎる精神が、高校では大人のそれに落ち着いてくる。そうして、自分で友人をうまく選んで仲を深められる。大学や社会のように社交辞令に気を使うこともない。だから、高校の友人は一生の友人になる、ということなんだろう。

でも、自分がそれに当てはまるのかと言われたら別で、私はやっぱりもう直ぐそこに迫る別れを惜しめなかった。

一緒に単語帳をめくっていた小堀が、顔を上げて苦笑した。

「それってさ、結構お前が大人だからだと思うんだ。なんとなく、一線引いて過ごしてきただろ?」
「え」
「誰もお前の中に踏み込めないまま、三年経っちゃったんだなあ。しっかりした所、凄いと思うけど、もう少し肩の力抜いてもいいと思うぞ」
「そんな、ことは」

無いと思う。思うのに、なぜかそう言い切れなかった。

私がぐっと言葉に詰まっていると、小堀は人の良い笑みを浮かべて。
俺は嫌だな、と零した。

「えっ、なんの話?」
「卒業しちゃったらお前とははいさようならって言うのは、俺は寂しいと思うって話」

出来ればもっとずっと長く付き合っていたいよ、と。
本当に寂しそうに笑った小堀にまるで胃の奥の方を握り締められたような、妙な感覚に身体が沸いた。

そこで初めて、私は卒業するのが寂しいと、思った。


 
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