静かに何度も首を振った
2013/12/10 08:55
いやだ、いやだ、と。
小さな子供みたいに、何度も首を横に振った。
ぎゅっと瞑った目からは、とめどなく涙が流れていて、頬を伝って外気に冷やされて、酷く冷たい。
それでも何度も首を横に小さく、ずっと振り続けながら、やだ、いやだ、とこぼし続けた。
こんな我が儘ばかりでは、嫌われるかも知れない。まるで小さな子供だ。
それでもいい、と思った。
嫌われたって、近くに居てくれるなら。
近くに居てくれないのならば、嫌われたって。
彼が小さな溜め息をついたのがわかった。そっと伸びてきて頬に触れた手は、いつもは冷たいのに。こんなときばかり暖かくて、それも許せなくてまたぼろぼろと涙が零れる。
「仕方の無い子供だ」
「だっ、て、やだ、いやだ、いやだよお」
「でも、もう決めてしまったんだ」
残酷な事を告げる唇が、声が優し過ぎて消えてしまいたい。
そっと親指がまぶたにそって目頭から目尻をなぞって、涙を払った。
「置いて行くけど、捨てては行かない。三年間側には居てやれないけど、嫌いにはなってやらないよ」
嫌ならお前が俺を嫌え、なんて。
嫌いになれないから嫌いになって欲しかったのに。
いっそ全てを諦められるよう、捨てていって欲しかったのに。
「赤司くん、なんて、だい、きらい」
ふぐふぐと嗚咽を漏らしながら言った私に彼は、不細工、と笑いながらキスをした。
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