「私がアレをセッコにやってしまわなかったことで、お前が馬鹿みたいに喜んでるって、知ってるぞ」





「わざとやったんだ。まんまと騙されやがって、お前は本当に間抜けだな」



ベッドの上で組み敷かれ耳元でそんなことを言われても、今の名前には言い訳にしか聞こえない。

ベッド脇の本棚に並んだうちの一冊にいつの間にか真っ赤な布が挟まっているのを見てしまった後では、そんないつもの彼らしいセリフも、全然「らしくもない」照れ隠しのようにしか思えなかった。





私が贈ったリボンを栞として取って置いてくれているのも、私が指摘したらこれも「わざと喜ばしてやっているんだ」というんだろうか?


想像して、名前は幸せで、身体をいやらしく触られているのにも関わらずにこにこした。



「ニヤニヤしやがって、気持ちわりぃ女だ。
それでも嬉しい、なんて思ってるんだろう?お前の考えていることなんか、全てお見通しだ」

名前にとっては、満足そうに言うそんなチョコラータが頼もしい。


こうして今年のバレンタインの夜は予想外に甘く過ぎていった。

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