「うーん…」
「どうした円堂…カレーが喉にでも詰まったか?」




カレーに目玉焼き




「なぁなぁ、ふぉーへんひ」


「とりあえず、口の中のカレーを飲み込んでから話せ円堂。」


夕食。
チームメイト達ががやがやと楽しそうに食事をしている中、もごもごと口いっぱいに夕食のカレーを含んで円堂が話す。
円堂の隣で食事をしていた俺は、はぁと一つ溜息を吐いて、今にも嬉しそうに話し始めそうな円堂をとめた。
俺の忠告を受けた円堂は、一生懸命口の中のカレーを噛み、ごくんと慌ててカレーを飲み込んだ。


「なぁなぁ豪炎寺!」


「なんだ?」


ごくごくと水を飲んで一息ついた円堂。
その嬉しそうに笑う口元についたカレーを指で脱ぐってやりながら返事をする。
えへへと恥ずかしそうに笑って「ありがとう」と呟いた後、ぱっと表情を明るくさせて


「立向居ってさ、なんか目玉焼きみたいじゃないか!?」


嬉しそうにそんな事を言う円堂。
目玉焼き…?


「……なんでまた立向居が目玉焼きなんだ?」


円堂の発した言葉の意味が理解できずに、一瞬固まる。
目の前の円堂は満足そうににこにこ笑っている。
立向居と目玉焼きを何とか結び付けようと、頭の中のモーターをフル回転させるけど、全くもって答えは出てこなかった。
降参とばかりに、円堂にそう訪ねれば、にこにこと笑ったままの円堂は嬉しそうに頷いてから説明を始めた。


「前に土方が言ってたんだ!辛すぎるカレーには半熟の目玉焼きを乗っけたら味がマイルドになって食べやすいんだって。」


満足げに話す円堂。
そういえば、俺も沖縄で土方に世話になっている時に同じことを言われた事があるな…とぼんやりそんな事を考えながら黙って円堂の話を聞く。


「立向居が不動と一緒にご飯を食べるようになってから、なんか不動マイルドになっただろ!」


そこまで円堂の話を聞いて、何となくピンと来た。

窓際でカレーを食べながらぎゃあぎゃあと騒がしい綱海と立向意と不動の3人。
はたから見れば、普通に仲の良い3人組のようだ。
綱海が一人不機嫌そうなのと、笑う不動の顔がニヤニヤと人が悪そうな所を除けばだが…
それでも、あの不動が誰かと一緒に居る所など、合宿が始まった当初は考えられない光景だ。


「なるほど…それで目玉焼きか…」


「お!豪炎寺もそう思うか?」


今だぎゃあぎゃあとうるさい3人を眺めながらぽつりと呟くと、隣の円堂が嬉しそうに身を乗り出す。
円堂の言う通り、辛くて食えないカレーが不動なら、それをマイルドに食べやすくしてしまう立向居は半熟の目玉焼きかもしれない。
ならばその二人の隣で喚いている兄貴分の綱海は、みんなの元気の源のおにぎりといった所か…

そこまで考えて、自分がこんな事を考えるらしくなさに、少し笑う。


「?どうした?豪炎寺?」


突然口元を押えた俺を不思議そうに見つめる円堂。


「悪い。」


円堂の視線を遮るように片手を上げる。
カレーに目玉焼きにお米だなんて…全くもって、今目の前にあるカレーライスそのものではないか。
自分の考えのらしくなさと、あの3人にカレーライスというものが余りにも似合わなくて、俺は思わず笑ってしまう。


「なんだよ豪炎寺。面白いことあったんなら俺にも教えてくれよ!」


隣で不満そうにそう言う円堂に


「また今度な」


それだけ言って話を逸らす。
それを聞いた円堂は「えー!」と心底不満そうだったが、はとても言えやしなかった。
3人がカレーライスっぽいよなと言ったら、目の前の男が「そっか!すっげーな!豪炎寺!」と喜んでくれるのは分かっているのだけれども、
俺がそんな事を考えていたなんて柄にもないこと、かっこ悪くて言えるわけが無かった。


「なぁ豪炎寺!教えてくれよ!」


「またいずれな。」


「えー!!」


次第に白熱して声の大きくなる円堂。


「お前今日練習中にわざと立向居にぶつかっただろ!?」


「ああん?証拠もないのにいちゃもんつけんじゃねぇよ。なぁ勇気」


「おっまえ…また勇気…!!」


「お二人とも本当に仲良しですね!」


その円堂よりも大きな声で騒ぐ窓際の3人。
騒がしすぎるぞと風丸からのお叱りが入るまであと少し。







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先輩たちから見ての3人組






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