「お前、円堂のこと好きなのか?」
「!!!!!??」




男の子の気持ち




新学期も一月が過ぎ、学期明けテストも終わり、ようやく落ち着いてきた頃。
授業中にメールが来た。


「お疲れ。話したいことがある。今日の放課後ガスト集合」


誰かと思えば、鬼道だった。
あいつが授業中にメールなんて珍しいな。
そう思いつつ返信ボタンを押す。
文章を書き始めようとした丁度その時、もう1通メールがきた。


「追伸 サシでだ。必ずお前1人で来い。」


差出人はまたも鬼道だった。
あいつがこんなに念を押すなんて珍しいな…
とさして気にも留めずに返信する。


「了解」


それだけ打つと携帯を閉じ、俺は頭を授業に切り替えた。






ざわざわとクラス中が帰宅準備で騒がしい放課後。


「豪炎寺!一緒に帰ろうぜーーーー!!」


円堂がにこにこと笑って俺の肩を叩く。
今日は職員会議があるので部活動はない。
円堂が女の子になってしまってからは、そういう日は決まって俺は円堂と下校を共にしていた。
別に一緒に帰ろうと約束しているわけでは無かったのだけど、どちらからとも知れず、自然とそういう形になったのだ。


「すまん。今日はちょっと用事があるんだ」


俺が申し訳なさそうにそう言うと、円堂は一瞬きょとんとしたが、すぐ笑顔になって


「そっか!わかった。じゃあまた今度な」


と言った。
俺はもう一度「本当にすまん。」と言って円堂の頭を撫でる。
円堂は嬉しそうに目を細めると「うん」と笑った。






「すまん。待たせたな」

「いや、俺もさっき来たところだ」


俺がガストに着くと、鬼道はもう席に座っていた。
テーブルに何も乗っていないという事は、さっき来たというのは本当のようだ。


「急に呼び出して悪かったな。」


そう言って鬼道がメニューをめくる。


「いや」


そう言って俺もメニューをめくる。


「決まったか?」


メニューをめくりだしてから程なく、鬼道がそう聞いてくる。
ガスト集合というメールを貰ってから、俺はもうだいたい何にするか決まっていたので「決まった」と返事をする。
鬼道がテーブルの端に備えつけてある呼び出しのボタンを押す。
ピンポーンと軽快な音がして店員の女の人が「お待たせしました。ご注文はおきまりですか?」とお決まりのセリフを言う。


「バナナキャラメルプリンパフェを1つ」

「たっぷりイチゴの生クリームパフェ1つ」


店員が一瞬ぎょっとして俺たちを見比べた後、注文を繰り返す。
「以上でよろしかったですか?」と確認の後、


「「あ、生クリーム多めで」」


俺たちは同時にお願いした。





「さて、早速本題に入るが」


鬼道がバナナキャラメルプリンパフェを頬張りながら言う。
俺もたっぷりイチゴの生クリームパフェを頬張りながら鬼道を見上げる。


「お前たちの近況は土門から聞いているぞ」


近況?土門?

何のことか分からず怪訝な顔で鬼道を見つめる。


「単刀直入に聞こう。お前は円堂のこと、好きなのか?」


ごほっ!


パフェが気管に入る。
唐突に何を言い出すんだこの男は…


「円堂のことは…尊敬しているが…好きとかそういう恋愛感情は…ない…」


俺はむせながら必死に訴える。
そんな俺を鬼道はじっと見つめてはぁとため息をつく。


「やはり自覚なしか…」


ぼそりと呟く。
俺は咳き込むのに必死で鬼道が呟いた言葉が聞こえなかった。


「まぁいい…どうだ、最近円堂の様子は」


ドリンクバーで取ってきたカフェオレを口に運びながら鬼道が尋ねる。
急に話が変わったな…と思いつつ返事をする。


「新学期が始まって最初の頃は元気が無かったが…今は制服にも学校生活にも慣れて楽しそうにしている。」

「円堂らしいな。友達も、もちろんたくさんできたんだろう?」

「ああ。あいつは友達を作ることに関しては天才だ。」


その話を皮切りに、学校生活の事、円堂の事、サッカーの事、色々な話で盛り上がる。
鬼道がもともと聞き上手なのか、口下手な俺も鬼道の前ではすらすらと言葉が出てくる。


「それで円堂、体育のサッカーでつい本気でゴッドハンド出しちまって…」


くっくっと俺が笑うと、鬼道はそんな俺を見て


「お前は円堂の話をする時は本当にいい顔をするな。」


とフッと笑った。


「…そうか?」


俺はなんだか照れ臭くなって、視線を逸らす。
すると鬼道は笑みをひっこめてじっと俺を見て言った。


「時に豪炎寺、さっきも聞いたがお前は円堂が好きなのか?」


真剣な表情でそんな事を聞いてくる。
くどいぞ。と俺は言って。


「何度も言うが、俺は円堂を尊敬しているし、大事な仲間だが、恋愛感情とかはない。」


鬼道を見つめてきっぱりと言う。
そんな俺の視線を受けて、鬼道はにやりと笑うと。


「そうか、俺は円堂のことが好きだ。」


と確かにそう言った。


「円堂はすごい奴だ。あんなにまっすぐで熱い人間に俺は今まで出会った事が無い。」


カフェオレを一口すすり鬼道は続ける。


「円堂が女なら間違いなく好きになっていたとずっと思っていた。それがどうだ。円堂は本当に女になってしまった。」


コーヒーカップをことりと置いて


「お前は円堂のことが好きだろうと遠慮していたが、お前がそういう気持ちなら遠慮することはない…」



「円堂は俺が貰う。」



にやりと笑って俺を見つめた。

俺はというと、鬼道の突然の告白に頭が真っ白になっていた。
鬼道が…円堂のことを好き…だと…?
鬼道の言う通り、円堂はすごい奴だ。
あんなに熱くて、まっすぐで、気持ちのいい奴今までも、きっとこれからも出会うことはないと思う。
だが…


「円堂は…男だぞ?」


俺は働かない頭を何とか動かして鬼道にそう告げる。
それだけ言うのがやっとだった。
鬼道は何だそんな事とでも言うように鼻をふんと鳴らして


「だが、今は女だ」


とさらりと言った。


「それはそうだが…いつ男に戻るかも分からないんだぞ…?」


こいつは分かっているのか?
手のひらが汗ばむのが分かる。
その手を握り締めて鬼道を見れば鬼道はまっすぐに俺の眼を見て。


「確かに先のことは分からない。男に戻った円堂を今と同じように好きでいられるかも分からない。
だが今現在円堂は女だ。円堂が好きなこの気持ちを抑えることは出来ない。」


俺は黙って鬼道を見つめた。


「円堂はいつも元気な奴だが、1人で抱え込む時があるからな。そういう弱さを俺が支えてやりたい。俺があいつを守りたいんだ。」


そんな事は鬼道に言われなくても知っている。
初めて円堂が女の子になった日のことを思い出す。
布団に丸まり、目にいっぱい涙を溜めて俺を見上げて…
力なくおれの手を握って不安そうに肩を震わせて…

円堂がもし鬼道とうまくいったら…

そういう姿を俺以外の男に見せるのか?

不意にそんな考えが頭に浮かんだ。
とたん俺の胸はむかつきを覚えた。
もやもやと胸が苦しい。

イヤだ。
俺以外の男にあんな円堂見せたくない。

そう思って鬼道を睨む。
すると鬼道は余裕たっぷりに笑って


「今のお前の顔、円堂を誰にも渡したくないって顔をしているぞ。」


そう言った。
誰にも円堂を渡したくない?
当然だ。あんな円堂の姿、他の誰かに見せるだなんて考えただけでも腹が立つ。
円堂の笑顔も、泣いた顔も、他の色んな表情も全部全部俺だけのものにしたい。
それはひどくわがままで、どうやってもそんなこと無理だって分かっているけど、願わずにいられなかった。
たとえ円堂が元は男で、いつ男に戻るか分からないとしても…
そうだ。そんなことは関係ない。
鬼道の言った通りだ。この気持ちを抑えるなんてできない。
俺は円堂を、あの笑顔をこの手で守りたい。

そこまで考えてようやく気付いた。
そうか。


俺は円堂のことをそういう意味で好きだったのか…


俺はきっと鬼道を睨むと


「前言撤回だ鬼道。俺も円堂のことが好きだ。円堂は渡せない。お前にも、他の男にもだ」


はっきりと、そう言った。

すると鬼道は先ほどまでの厳しい表情を和らげてふっと笑った後、


「その言葉、待っていたぞ。豪炎寺」


と言った。

この男、恋敵が宣戦布告をしたというのに何だこの余裕は。
と俺が怪訝な顔をしていると


「今まで俺が言ったことは全部嘘だ。すまないな豪炎寺。」


と、爽やかに言い放った。


「なっ…!!?嘘…!!!?」


俺は最初意味が分からなかった。
嘘?なにが?嘘?
鬼道が円堂を好きだといったのも、自分のものにすると言ったのも全部嘘だっていうのか?
頭で理解したとたん顔が真っ赤になるのが分かる。
俺は鬼道に乗せられて一世一代の大告白をしてしまったのか…!?


「鬼道!!てめぇ…」


俺が顔を真っ赤にしながら立ち上がると
鬼道は「まぁまぁ話を聞け。」とカフェオレをすすりながら落ち着いている。

むかついてはいたが、鬼道がこんな嘘をつくのには何か理由があるのだろうと思い直し、大人しく席に座った。

それを確認すると鬼道はゆっくりと話始めた。


「3日前、土門からメールが来た。」


そういって携帯を広げる。
少しカチカチと携帯をいじった後「その内容はこうだ」とメールを音読し始めた。


「鬼道。あいつらもうダメだ。
毎日毎日ピンクのオーラが漂っている。
もう校内じゃすっかりカップル成立の噂が流れてる…
でも当の本人たちが無自覚なもんだから目も当てられない。
特に豪炎寺の円堂の甘やかしっぷりといったら…
俺はもうどうにもこうにも耐えられない。鬼道の力で何とかしてくれ。」


俺はゆでだこの様に真っ赤になりながらパクパク声にならない声を上げた。


「他にも来ているぞ。染岡に風丸…目金からも来ていたな」


「読むか?」と聞かれたが、俺はテーブルにつっぷして「いい。頼むから止めてくれ。」と丁重にお断りした。

そんな俺を見てアハハと鬼道は笑うと携帯をしまった。


「まぁ文章ではこんな風に書いているが、みんなお前達のことを心配しているんだよ。」

「恋愛事にはてんで無頓着なキャプテンと、ボールが無ければ何も語れない口下手なエースストライカーのことをな。」


そう微笑むと、プリンパフェの最後の一口を口に運んだ。

そんな鬼道をじとっと睨んで


「それはいいとして…俺がもし円堂のこと何とも思ってなかったらどうするつもりだったんだよ…」


と問えば。
きょとんとして


「もし本当にお前が円堂の事を何も思っていなかったら、
今日はただパフェを食べて世間話をして帰るつもりだったさ。
土門にはお前の勘違いだったとメールしてな。
だがな、円堂の事を話している時のお前、本当にいい顔をしていた。
それで確信したよ。お前は円堂のことが好きなんだと。」


しれっと言った。


「だからって…わざわざ嘘なんかつかなくても…」


俺が抗議すると


「こうでもしないと豪炎寺、自分の気持ちに気が付かないだろ。」


俺の反撃は鬼道の一言によって見事に打ちのめされた。


「それに気付いたとしても、お前円堂が元は男で、いつ男に戻るか分からないってモヤモヤ悩んで踏み切れなかっただろう?」


ぐさっと図星をつかれた。
そうだ。あそこで鬼道が嘘を吐いてくれなかったら…
俺は円堂が元は男で、いつ男にもどるか分からないって状況に縛られて、円堂への気持ちをごまかしていたかもしれない…
本当に鬼道は人をよく見ている。
俺が悩んでいることを本人よりも理解して、的確な解決策を指南してくれる。

俺はガシガシと頭を掻いて。


「くそっ…やっぱりお前は天才ゲームメーカーだよ。」


と顔を真っ赤にしながら嫌味を言う。
すると鬼道はぱちくりと瞬きしたあと、「そういってもらえて光栄だ」と人の悪そうな笑顔で笑った。


「円堂の隣は、お前が一番似合うよ。」


先ほどまで浮かべていた笑顔を消して、真剣な目をした鬼道が言った。


「俺らの大事なキャプテンの事…頼んだぞ」


「任せておけ。」


俺も目を逸らさずに鬼道を見つめた。




その後はごくごく他愛の無い話をして、いい時間になったので店から出た。
夕日が輝く帰り道。
サッカーの事やお互いの学校のことを話していた俺と鬼道。
鬼道がふいに「そうだ」と声を上げるもんだから何かと思ってそちらを向けば

「それとな、豪炎寺」

「何だ」

「学校内でいちゃつくのはできるだけ控えろ。」

「…!!!!!」

「周りが照れるからな」

「…分かったから…もう言わないでくれ…」


俺は顔を真っ赤にして呟いた。
ああ…こんな気持ちを自覚してしまって…
俺は明日からどんな風に円堂と接すればいいんだ…
俺の頭は色々な意味で円堂のことでいっぱいだった。






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そもそもこのシリーズ高校生でみんなと違う高校に行った鬼道さんが
円堂の心配をして豪炎寺を呼び出す話が見たいなぁと思って書き始めたのでした。
ちなみに、私の頭の中では
公立高校→円堂、豪炎寺(円堂とサッカーしたいために公立選択)旧雷門イレブン、夏未(雷門系列の高校のため)、アメリカ組、リカ(一ノ瀬を追いかけて転入)
私立→鬼道、春菜(来年入学)、帝国学園の皆さん。
イナズマキャラバン組→春休みの間は雷門イレブンと河川敷で練習後各々地元高校に帰省。

鬼道さん、一人雷門から離れて寂しいじゃない!と思われるかと思いますが
高校が違うからこそ、より仲良くなれることもあるので…
ていうか、実際私がそうだったので…
他校にばかり仲良しが増えていくオウコと呼んでください。(帰れ)
そんな感じです。

が、管理人が気まぐれなためどうなるか分かりません。いきなり中学生に戻っていたらすみません…

ていうか、雷門ってもしかして私立なの?え…どうなの…??





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